不二受長編

□★恋物語(跡不二)
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軽く拳をぶつけ合う菊丸と不二。
3年6組の名コンビだった。
「不二は相変わらず綺麗やなあ」
跡部の隣に並んだ忍足が、にやにやと笑って寄越す。
「惚れンなよ」
「俺はだれかさんと違って無類の女好きやねん」
「俺だってそう思ってたぜ」
さらりと跡部が言う。
跡部が不二への恋心に気づいたのは、2年のころだった。
合同体育のプールで半裸になった不二を見たとき、変にどきどきして勃起してしまったのだ。
あの淡くも苦い思い出は、今でもはっきり跡部の胸に焼き付いている。
しなやかに引き締まった肢体。
透けるように滑らかな肌。
全体的に華奢で小作りな骨格。
跡部の眼には、不二の周りだけ鮮やかに彩られているように映った。
それからというもの、跡部の眼は気づけば不二の姿を探しており、視界の端に映れば胸がじわりと温かくなるようになった。



昼休み。
不二は跡部から受け取った携帯をポケットの外から触って、ため息を吐いた。
「どうした、不二?」
向かい合って弁当を食べていた手塚が、目ざとく尋ねてくる。
「うーん」
一瞬、跡部のことを口にしようかと思った不二だが、やはりやめた。
「なんでもないよ」
笑った不二がサンドウィッチを頬張る。
「そうか?」
手塚は優しい。
不二は親友の気遣いを嬉しく思いながら、もう一度なんでもないよと微笑んだ。

夜。
跡部から受け取った携帯電話を机の上に置いて本を読んでいた不二は、聞き慣れない着信音に顔を上げた。
どうしようかと戸惑っていたが、不二はおそるおそる携帯を開いてみる。
メールの受信のようだった。
受信メールボックスを開いてみると、一番上に今受信したメールが入っていた。
ちょうど午前0時だ。
件名は『不二へ』
不二は跡部の顔を思い出しながら、そのメールを開いてみることにした。


さあ恋物語は始まったばかり……。


 
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