不二受長編

□★恋物語(跡不二)
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不二はメールを読んだ後、口元に手をやった。
「……」
これはどう見ても告白のメールだ。
信じられなかった。
跡部は不二が密かに想いを寄せている相手だったのだ。
だがしょせん男同士。
万にひとつも望みはないと不二は思っていたのだ。
跡部のメールには、今日が彼の誕生日であること、それゆえに思い立って不二に告白することにした旨が書いてあった。
不二はおそるおそる返信のメールを打ち始める。
「誕生日おめでとう、からかな…」
跡部については、不二の憧れで終わると思っていた。
廊下や合同体育のときに眼が合うので、十分満足していたのに。
まさかこんなことが起こるなんて。
跡部は今なにをしているだろう。
自分からの返信を待っているだろうか。
何度も書きなおしながら、不二はメールを送信した。
頬が火照っている。
不二は胸がざわめいていた。
着信がすぐ返ってきた。
「…もしもし」
『よぉ。不二か』
甘く低い跡部の声が、受話器越しに不二の耳を震わせる。
『良い返事、ありがとな』
「ううん…。改めて、誕生日おめでとう。跡部」
『…サンキュ』
それからふたりは、跡部の誕生日の予定について話した。
『身内だけのささやかなパーティーは、日をずらして昨日済ませた。今日は1日空いてるンだが』
不二のために空けてあったとは言わない跡部だった。
「じゃあ、その時間…ぼくが貰ってもいいかな」
くすりと不二が笑う。
『ああ。いいぜ』
初めて恋人になった途端、大きなイベントだ。
「きみの誕生日は知ってたんだけど、まさかこんなことになるとは思わなかったからなにも用意してなかったんだ」
男からのプレゼントを、跡部が喜んで貰うとも思えなかったからだ。
ごめんね、と不二は謝った。
『不二。今日の夜はホテルを取ろう。オメーとふたりで祝いたいんだ』
「ホテル……」
だけど高いよ、と言おうとして、不二は跡部のエグゼクティブな金銭感覚の凄さを知った。
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