不二受長編

□★恋物語(跡不二)
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成績では首席を争い、生徒会選挙では双方推薦され。
手塚は生徒会には興味がないと言って選挙には出なかったが。
「それにしても念願叶って良かったなあ」
話を変えるように、忍足が話題を戻した。
「ああ」
頬が緩むのが止められない跡部だった。
「で、今日の誕生日はどうするん?」
おめでとさん、と言いながら、忍足はにやけた顔で問うた。
「やっぱ貰うんか?」
「あー…それが」
跡部は神妙な顔をした。



跡部の家は、不二の想像を遥かに超えて大きなものだった。
噂では宮殿などと呼ばれているらしいが、たしかに類を見ない規模だった。
「どうした?」
不二の背を抱いて、跡部は悠然と歩みを進めていく。
「…凄く広いんだね」
「なに惚けた面してンだよ。すぐ慣れるぜ」
暗にまたすぐに呼ぶと言われて、不二はなんだかくすぐったい気がした。
跡部の部屋に通された不二は、一番先にキングサイズのベッドに眼を吸い寄せられてしまった。

『初夜』

跡部の台詞が不二の中でぐるぐると回る。
「不二?」
優雅な姿勢で不二にテーブルセットの椅子を勧める跡部に、不二がためらいがちに近づいていく。
――あのベッドで自分は今夜、跡部に抱かれるのだろうか。
そう考えると、不二の心臓はどくどくと波打ってくる。
「…ありがとう」
フランス料理の一流レストランのように椅子に腰掛けさせられた不二は、礼を言ってテーブルの上を見やった。
綺麗に磨かれた、フォーク、ナイフ、スプーン。
フランス料理の作法は、それらを内側から取るのか外側から取るのかと不二が思案していると。
「堅くなるなよ。俺しかいねーンだから」
に、と跡部が笑った。
出てきた食事は、不二のフランス料理観を変えるのに十分だった。
「凄く美味しい…」
「そうか。良かったぜ」
本当はフランス料理は順番に運ばれてきながら食べるのだが、跡部は不二とふたりきりで居たかったので、最初に全部運ばせた。
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