不二受長編

□★女王様と生徒会参謀
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それは、去年の。
クリスマスの朝。

去年の12月25日は、土曜日だった。

「おお。来たか」
ドアを開けた忍足の前に、白いコートを手にした不二が立っていた。
「……」
無言のまま部屋に入ってきた不二は、ソファに腰掛けるとほっそりとした脚を組む。
「そうしてると、まんま女王様やなあ」
不二の前にコーヒーを出した忍足は、にやりと笑ってコートを受け取った。
「このコートはいらんで。自分、今日は一日中ここにおるんやから」
「……」
不二が髪を掻き上げる。
まだなにもしていないのに彼には悩ましげな色気があり、忍足は小さく笑った。
普段の不二は白い学ランに身を包んだ隙のない会計部会計長、忍足はその会計部と犬猿の仲にある生徒会参謀だ。
「……あ」
不二はコーヒーにひとくち口付けて小さく眼を見開いた。
不二がちらりと忍足を見やる。
「自分の好み、なんで知っとるかって? 内緒や」
忍足が自分のコーヒーを飲みながら言った。
「…さすが、タラシ」
「褒めとんのかそれ」
くすりと不二が笑う。
警戒していたらしい不二がやっと笑ったことに、忍足が眼を細めた。
「俺、いつもはこんな優しゅうないで。もてなしたりとかせぇへんもん」
「へえ」
不二がもうひとくちコーヒーを啜る。
綺麗なアーモンドアイズが忍足を見ていた。
「きみのことだから、ヤることヤって終わりって感じなんでしょう」
「そうやなあ。シャワーも貸さへんし」
「…そう」
忍足は、身内と認めた相手以外には冷たい男だ。
「それじゃ、ベッドで? それともここで?」
「誘ってくれるのは嬉しいんやけど、なんや機嫌悪ない?」
「別に、きみの男の子たちの扱いがひどいからって、軽蔑したりはしないよ」
忍足は苦笑した。
「俺のお友達にまで優しいんやな」
忍足が不二の隣に腰掛けて、彼の耳元に唇を寄せる。
「ベッド行こか」


不二は忍足の下で、熱い息を吐いていた。
「…忍足」
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