不二受長編

□★男嫁(跡不二←リョ)
1ページ/63ページ



昭和初期。
平安時代から続く旧家であった。
帝久家。
その日、不二という少年が輿入れした。
次男・跡部の元にである。

「俺は知らねえぞ! 誰が野郎なんか嫁にもらうか!」

どたどたと廊下が騒がしい。
跡部と執事が揉めているのである。
「ですが跡部様。旦那様の決めごとには逆らえません…」
「親父の言うことなんざ知ったことか! しきたりだかなんだか知らねえが、俺には俺の道がある!」
やっとのことで跡部をなだめすかした執事が汗を拭く頃には、すでに式目前となっていた。


「汝、跡部を生涯夫とすることを誓うか」
「…はい」
「汝、不二を生涯妻とすることを誓うか」
「……………はい」
不承不承といった感じで答える跡部の表情は厳しい。
跡部の角度から、小柄な不二の顔は見えなかった。
誓いの口付けは、跡部の意向でなされないことになっていた。



初夜。


不二は寝付けずにいた。
「跡部」はまだ来ない。
深夜、ドアが開かれる気配がした。
不二が身を硬くする。
ゆっくりとベッドに近づいてきた人物は、そっと不二の肩を撫でた。
「ねえ。アンタ、起きてる?」
一度びくりと震えた不二が顔を向けると、暗闇の中、ひとりの少年が彼を覗き込んでいた。
「跡部…?」
笑った気配の後、彼はベッドに乗りかかってきた。
掛け布団を剥いで、不二の衣に手をかける。
上背は、不二より一回り小さい少年だった。
違和感をもった不二だが、なすがままにされる。
衣の前をくつろがれて、じり、と思わず後じさるが、壁に当たって逃げ場を失ってしまう。
「あ……」
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ