不二受長編

□★女王様と生徒会参謀
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【プロローグ〜クリスマス待降節編・Web拍手お礼小説】


「女王様やん」
クリスマス・イヴの予定を考えながら中庭を歩いていた生徒会副会長の忍足は、中庭の木陰のベンチで昼寝をしている会計長の不二を見かけて足を止めた。
「なんやこないなところで寝よって。風邪引くやん」
普段は犬猿の仲の、生徒会と会計部である。
「…起きんとだれかに襲われてまうで?」
忍足は不二の寝顔を見ながら、ひとつため息を吐いた。


「…ん」
不二は眼を覚ますと、自分に掛けられている制服のブレザーに気づいた。
「……忍足?」
食えない笑みを浮かべた忍足が、不二の寝顔を眺めている。
不二はばつの悪そうな顔で、忍足にブレザーを渡した。
「…ありがとう」
「襲われるで、女王様」
にやりと忍足が言った。
「そんな物好きはいないよ」
くすりと不二が笑う。
「おるで、ここに。ホンマは襲ったろ思てん」
「冗談ばっかり」
忍足が不二に顔を近づける。
「嘘やないで。なんなら証明したるで。クリスマス空いてへん?」
「クリスマス?…別に、予定はないけど」
「1日付き合うてや」
不二が苦笑した。
「ずいぶん急だね。きみのだらしない噂は色々聞いてるよ。イイ子は他にだれかいるんじゃない?」
「自分が空いてるなら自分にする」
言った忍足が、不意に不二の唇に触れる。
「……!」
不二が慌てて周りを見渡した。
「だれかいたら…」
「ちゃんと周りくらい見とるから安心せや」
意地悪げに笑った忍足を睨んで、不二がベンチを立つ。
そのまま立ち去ろうとした不二を、忍足が呼び止めた。
「クリスマス、忘れんなや。女王様!」
ひらひらと手を振って不二は歩き始める。
不二を見送って、喉の奥で忍足が笑った。

──今年は、面白いクリクマスになりそうやな。




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