不二受短編2

□不二的日常シリーズ
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 明け方、蒸し暑い部屋の中で不二は目を覚ます。
 まだ皆眠っている時間だ。
 太陽はまだ星空の彼方にある。
「……」
 家族は寝静まっている。
 弟も今ごろ、ルドルフの寮でぐっすり熟睡しているに違いない。
 裕太の寝顔を思い出して、不二は微笑んだ。
 今では兄よりも育ってしまったが、眠っているときはあどけない、可愛い顔をする。
 もちろん、いつも裕太は不二にとって可愛かったが。
「あ…メール来てる」
 携帯を開いた不二は、メール受信を表すマークに、ボックスを開いてみる。
 親友から、昨夜眠った少し後に受け取ったものだった。
 明日の授業変更なんだっけ、と書いてあった。
 その後で、寝てるみたいだから乾に聞くね、と受信していた。
 くすりと不二が笑う。
 いくら乾でも、そんなことまで知っていると思うのか。
「いや…」
 案外知っているかもしれないな、と思い直してまた不二は笑いを溢した。
 その親友も今ごろは夢の中に違いない。
 大石の家の熱帯魚は、夜中でも水の中に揺れているのだろう。
 手塚の寝顔は、合宿で見たことがあるが、眼鏡を外すとちょっとあどけなくてそれがまた好ましかった。
 乾の眼鏡も、いつか外してみたい。
 今、乾のベッドを急襲してやったらどうなるだろうかと考えて不二はくすりとひとり考えを楽しんだ。
 海堂の朝は早いだろう。きっともうすぐ起きてくる時間だ。
 ランニングのコースでよく越前の家の猫に会うと言っていた。
 その越前の愛猫も、今は主人のベッドですやすや眠っているころか。
 桃城の豪快ないびきは可笑しかったな、と思いながら不二はわずかに微睡んでいった。
 夜の帳があけるのは、まだもう少し先のこと。

 今はゆるりと、今ひとたび眠りを受け入れよう。




Fin.
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