不二受短編2
□★夏夜の寝物語集
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【跡不二】
「機嫌、悪いね」
ベッドの中。組み敷かれながら笑う不二の肩に、跡部は思いきり歯を立てた。
「…──。…」
押し戻そうとするのを許さず、噛み跡を満足げに舐める。
「花火、観てないんでしょ?」
これからどうと微笑う不二に、ひとつ鼻を鳴らす。
『あっちで、いいモン見たわ』
押さえつける手に、力がこもる。
『男同士の濡れ場やて』
汗ばむ肌に手を滑らせて。
「…黙ってろ」
震える不二に、にやりと笑う。
『──その「彼氏」とやら、遊びなんだ? きみのこと、大事にしてくれないだろ』
薄紅に火照った裸身を侵していく間に、異質な匂いを嗅ぎ当てる。男の、本能ゆえに。
『…千石くん』
蒸した、花火の夜に。
「不二。シャワー浴びてこいよ」
轟々と立ち揺らめく、男の炎。
「今日は先約、あったんでしょ」
──頭から、足の先まで。
「いいんだよ。それより」
──がつがつと食ってやりたい。
「この、馬鹿野郎」
どこもかしこも、口に含んで。香しい不二の甘さを味わうのは。
跡部だけの、特権。
不二が、嬉しげに微笑った。
「…やっぱり、きみがいい──…」
fin.
2003/7/25