不二受短編

□★温泉旅行(忍不二)
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「──…うお」

「ん」

出会い頭に奇妙な顔をしたお互いが、しばし沈黙する。
「青学の不二が、こんなとこで何しとんねん」
北海道の避暑地である。
「…狭いなぁ」
不二家は急きょメンバーの都合がつき、夏休みの家族旅行だ。
「ほんまかいな…」
対して忍足は、気軽な一人旅。
「まあええ。して、今から風呂行くとこなん?」
不二の格好を見て、腕時計に眼を落とす。
「やっぱり…こういうとこじゃ三度は入るものだよ」
「どこのママさんやねん自分」
今は──日付が変わろうとする頃。夜空には、見事に無数の星。
「月見にはちぃと早いねんけどな」
つき合うたるわと、面白げに忍足が笑った。
「露天風呂って、ぬめるね」
「ここら辺はそうでもないで。きてみぃ」
静まり返った空に、沸き上がる源泉の音ばかり。
「みんな南のほう行くんやもん。北に来よ思ぉたん、俺たちだけやねんで」
少し笑って忍足が髪をまとめ上げる。
「あの弟くん、寝とんのやろ」
「ああ…。面識あるんだっけ。裕太にちょっかい出さないでよ」
「自分らが兄弟がらみで怒らせたらあかんの、よぉ伝わってきとる」
だけどな、と忍足がにやつく。
「ちょっと気になるんは、嘘やないで」
不二が、あ、と思う間もなく。
「…思ったより柔くてええ…ッぶ」
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