不二受短編
□俺様と俺(跡不二)
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青学の不二と氷帝の跡部は、幼なじみである。
そして、友人以上恋人未満という、甚だしく微妙な関係でもあった。
「それでうちの学校の子、ヤり捨てしたんだって?」
夏の午後。青学寄りの裏通りにある喫茶店で、不二は跡部と向かい合っていた。
「最低だな」
「ヤり捨てじゃねーよ」
跡部がストローをアイスコーヒーの大きなグラスから抜き出して言った。
冷房の効いた店内にあっても、グラスは汗をかいていた。
ざわめきの中、ふたりがどちらからともなく目を合わせる。
「向こうが、一度でいいからっつってきたんだ」
「で、きみは、その後始末をぼくにさせたわけだよね」
不二は跡部から眼を離して、グラスに刺さったストローを弄んだ。
「…恥かかせたのは、謝るぜ」
跡部が『謝る』などと殊勝な言葉を口に出すのは珍しいことだった。
不二との長い付き合いにおいても、せいぜい数度といったところか。
「反省してる?」
不二が、涼しげな笑みで跡部に尋ねる。
「…しつこいぜ。してるって言ってンだろ」
「もう少し腰を低くしろよ、こんなときくらい」
「アーン?」
互いに軽く睨み合う。
先に目を逸らしたのは、跡部だった。
「…ちょっと似てたんだよ」