不二受短編
□★俺様と俺(跡不二)2
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なんということない、部員たちが着替える普通の光景。
だがその実、青学テニス部部室は、奇妙な緊張に包まれていた。
「不二〜」
不二の隣でポロシャツから頭を抜いた菊丸が、呆れたように声をかけた。
黙々と着替える不二には、部員たちからのいくばくかの興味を含んだ視線がちらちらと向けられていた。大石など、不二の生肌を見て顔に朱を上らせたり、その一方で不二の不機嫌を心配したり、忙しい。
「跡部とは実際んとこ、どうなの?」
ぴくりと不二の手が震えた。
「どう…って?」
なんでもない声音で不二は口を開いたが、そのオーラはどす黒い。
慣れている菊丸でなければ、今の彼に声をかけようとは思わないだろう。
それも、核心をついた話題を振ろうなどとは、いくら気になっても思わないに違いない。
「跡部って不二のなに?」
これが菊丸である。
その菊丸でも、針のむしろの教室では話題にしなかっただけ思慮はある、か。
「幼なじみだよ」
青学の不二と氷帝の跡部は、幼少のころからのテニス仲間である。
「んじゃ跡部の片思い?」
跡部が不二愛宣言をしてから三日目。
女が、不二を巻き込んで騒ぎを起こしてから、二日目。
「ご想像にお任せするよ」
肯定も否定もしない不二に、菊丸は、おや、と目を見開く。