不二受短編

□★座薬(跡不二)
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「ったく、熱があるなら言えよ」
「ごめん」
不二の部屋である。
不二はベッドから潤んだ眼で跡部を見つめ返した。
「オメーの家、熱冷ましのモンなんにもねぇのかよ。薬局行ってくるから待ってろ」
「ごめん…」
不二は謝るしかなかった。
偶然久しぶりに、ストリートテニスコートで氷帝の部長・跡部と会って打ち合いをしていたのはいいが、途中で不二が倒れてしまったのだ。
驚いた跡部に介抱されて家まで送ってきてもらったわけである。
「んじゃ行ってくるから、おとなしく寝て待ってろよ」
「うん」


跡部が戻ってきたのは、それから30分後だった。
「悪ィ。これしかなかった」
そう言って跡部が袋からガサゴソと出したのは、こともあろうに座薬だった。
「………嘘でしょう」
「嘘じゃねえ。これしかなかったンだよ」
茫然とする不二に、きっぱりと跡部は通告した。
「跡部。悪いけど、買い直してきてもらえるかな」
「アーン? 俺様に2回も行かせる気かよ。――男なら座薬ぐらいでガタガタ抜かすんじゃねえ」
「……」
不二は熱で回らない頭で必死に考えた。
なんとか彼を止める方法はないものか。
「オラ。とっとと尻出しやがれ」
あっという間に跡部が掛け布団を剥いでベッドに上がってくる。
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