不二受短編
□他校生(跡不二)番外編
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年明け、お正月。
今日は跡部が不二家に遊びに来ていた。
「跡部くん、ゆっくりして行ってね」
不二があまり友人を連れて来ないので、母はご機嫌だ。
「これ、おばあちゃんの家から送られてきたの。良かったら食べてね」
そう言って母がふたりの前に置いていったのは、――みかん。
こたつに合いそうな、なんとも庶民的な食べ物である。
「じゃ、私は買い物に行ってくるから」
ふたりがなにか口を開く前に、去っていってしまう。
不二は、みかんと跡部を見比べてほんのりと顔を赤らめた。
「あの…っ、ごめん…! 別に食べなくていいから……!」
跡部はじっとみかんを見ている。
跡部によりによってみかんを出してしまったことに動揺しながら、不二は慌ててみかんを下げようとした。
「いいぜ」
跡部はみかんを手に取る。
骨張った繊細な指がみかんに穴を開け、流麗な動作でみかんを傾けながら器用に皮を剥いていく。
その様子を、不二は半ば見入られるように見つめていた。
不二の視線に気づいて、跡部は一切れを彼の口元に持っていく。
上眼遣いに跡部を見上げた不二が、小さく口を開けた。
「……」
不二がみかんを咀嚼するのを、跡部が眺めている。
「餌付けしてる気分だな」
「……?」