不二受短編

□★Bitter Love(忍不二)
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【プロローグ〜バレンタイン待ち編・Web拍手お礼小説】

「14日……」


情事の後、ベッドに俯せて沈んでいた不二が、忍足の声に眼を開ける。
「空いとる?」
忍足が気怠げに問い掛けた。
「…空いてるけど」
「駅前の広場で待ち合わせや」
それだけ言うと、忍足は背を向けて寝てしまう。
不二は彼の長い髪を見ながら、静かに息を吐いた。
忍足侑士。
氷帝学園、三年。テニス部正レギュラー。
不二の、セックスフレンド。
いつも意地悪で冷徹な面ばかり見せるくせに、ときどき妙に甘えてきたりして不二を惑わせる。
機嫌の悪いときはいつもの三割増でそっけない。
不二は、今日自分はなにかしただろうかと思い返す。
いつものように私服で街で会って、いつものようにホテルへ来て体を重ねただけだ。
別に忍足を怒らせるようなことはしていなかった。
そっと不二が忍足を見ていると、視線を感じたらしい彼が振り向いて不二を見る。
「……」
「……」
忍足が小さく舌打ちした。
「来(き)ぃ」
不二がためらいがちに近づく。
傍まで来たところで、忍足が不二の腕を掴んだ。
腕を取られ、重心を失って忍足に倒れこんだ不二を、忍足が身をよじって抱き締める。
「忍足…?」
なにも言わず忍足は不二の頭を引き寄せ、唇を触れ合わせた。
瞬きをする不二をじっと見つめて、忍足は頭を掻く。
「あー…調子狂うわ」
低く言った後、忍足は大きく息を吐いた。
忍足としては、14日の約束など取り付けるはずではなかったのだ。
気が付いたらつい口が滑っていた。
――男同士でバレンタイン? 変やないか、やっぱり。
態勢を変えた不二を胸に抱いて、忍足は悶々と考えていた。




バレンタインまで、あと少し。




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