不二受短編
□★Santa's Xmas(塚不二)
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冬休み一日目、クリスマスの朝。
手塚家のインターホンが鳴った。
家人は旅行に行っていてひとりしかいなかったこの家の長男・手塚国光は、机に向かっていたのを妨げられて一瞬顔をしかめるが、階段を下りて玄関へ向かった。
「やぁ」
ドアを開けた瞬間、飛び込んできた光景に、手塚の眉間にしわが寄った。
そこには、編みタイツにスカートタイプのサンタクロース衣裳を身に纏った不二がいた。
「……」
無言で扉を閉めようとした手塚に、ちょっと待って、と不二が声をかける。
「せっかくのクリスマス、きみと過ごそうと思ってやってきたんだから」
「うちはサンタの宅配は頼んでいない」
追い払おうとする手塚に、だが、不二は負けていなかった。
「人通りの多くなってきたこの時間に、ぼくにこの格好で道を歩かせる気かい」
今はまだ人通りもまばらな早朝だったからいいが、これからの時間にチームメイトをこの姿で衆人環視の中に放り出すか、と言われ、手塚は返す言葉を探して一瞬考えた。
その隙に不二が玄関のドアを開けて、手塚家への侵入を果たしてしまった。
「ほら、堅いこといわない。今日はクリスマスだから、一緒に楽しもう」
悪戯げなサンタが、そう言って笑った。
「シャンメリーとチキンとサンドウィッチとケーキ、持ってきたよ」
不二はそう言って袋を見せた。
高級洋菓子店と老舗デパートの袋が三つあった。
「シャンメリーなら手塚も飲むでしょう」
手塚家のダイニングテーブルで袋を開け始めた不二を、手塚は止めるでもなく手伝うでもなく、うっそりと眺めていた。
ため息を吐いた手塚に、不二はくすりと笑った。
「ぼくらがこんなことするの、変だと思うかい」
不二と手塚は、ただの友人という関係ではなかった。
「お互い彼女もいないし、クリスマスの過ごし方としては悪くないと思うんだけど」
青学テニス部のチームメイトであり、去年はクラスメイトであり、今は――。
「…もちろん、良ければこの後のサービスも付けるけど」
あっちのね、と言う不二の貌が色艶めいて。
手塚の視線の先で、不二が妖艶に微笑う。
「…泣きをみるな、と忠告しておこう」
手塚が、低く言った。
「泣かせるつもり?」
困るなぁ、と柔らかに不二が苦笑した。
「ちゃんと今夜のうちに帰るから、心配しないで」
線引きをした不二に、手塚はそれ以上言葉を返すことはしなかった。
ツリーはないのかと言う不二に、手塚は渋々客室の押し入れからそれを持ってきた。
「綺麗だね」
リビングに飾られたツリーに、不二がご機嫌で微笑む。
「出番が来て良かったね」
ツリーを突(つつ)いて話しかける不二を横目に、手塚は自分の部屋に上がった。
手塚は自分のセーターとジーンズを持って下に下りた。
「調子が狂う。こっちにしろ」