不二受長編

□★1と2(塚不二)
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「なにそれ。変な口説き文句みたいになってるよ、手塚」
互いに一歩も譲らない。
「相手はだれだ」
「言わないでおこうかな」
「答えろ」
神妙な沈黙が下りる。
「まあいいか。きみが知ったところで手の出せる相手じゃないからね。…跡部だよ」
「跡部?」
唐突に出た氷帝の部長の名前に、手塚が顔をしかめる。
「どういう関係だ」
「どうって…きみと同じだよ。違うところと言えば、彼は優しいけどね」
互いに睨み合いが続く。
「せっかくセックスしてるんだから、楽しまなきゃ損だよ。これじゃまるで恋人同士の痴話喧嘩だ」
「今日は手加減しないぞ。不二」
「いつも、でしょ」
ヤッて捨てられて帰るのはいつものことだ、と不二は笑う。
手塚は不二を公衆便所のようにして扱った。
「もう喋らないから、早くヤッてよ」
「その余裕、いつまで保つか見物だな」
手塚が律動し始めた。
不二はいつものように喘ぎ声を最小限に抑えようとする。
「……ん……んッ」
手塚は、激しい。
いつも、不二の喘ぎ声が啜り泣きに変わるまで追い詰める。
「おまえは、俺のモノだ」
交接中に囁かれた手塚の台詞に、不二は気がつかなかった。



「まーた泣かされてきたのか?」
ドアを開けると、跡部が呆れ顔で立っていた。
跡部が顔をしかめる。
「これ、あいつが?」
不二の左頬の痛々しい爪跡を見て、そっと手を差し伸べる。
「痛…」
「あ、悪ィ」
とにかく入れ、と跡部は促す。
「救急箱を用意させる」
「英二とおそろいになっちゃうね」
「笑ってる場合じゃねぇだろ」
「夜中に押し掛けてごめんね」
「まだ起きてたからな」
跡部はタートルネックにジーンズという格好だ。
「部活の仕事? 男連れ込んでしけこんでたどっかのだれかさんとは大違い」
「そのふたりの部長を渡り歩いてるオメーはなんなんだよ」
笑った跡部がココアを用意してきた。
「ミルクたっぷりだったよな」
「うん。サンキュー」
しばらく落ち着いた沈黙が下りる。
「……」
「…ねぇ跡部」
ココアを両手で持った不二が上目遣いになる。
「今日、添い寝してもいい?」
「あン?」
抱いてくれと言われたことはあったが、添い寝と言われたのは初めてだった。
「いいけど…マジでどうした?」
「手塚に、きみとのことがバレて」
跡部が軽く眼を見開く。
「関係を切れって言われた」
「…なるほどな」
す、と跡部が不二の頬に手を延ばした。
「んッ」
柔らかい口付けが、不二に施される。
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