不二受長編
□★Always.(跡不二)SS
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言って、不二は猫の顔の形の型を生地から抜いて、色の違う生地を小さく丸く取って、ちょこりと目をつけた。
跡部がまんざらでもなさそうな顔でそれを見ている。
不二は小さく微笑んだ。
一度、大学時代の夏休みに帰省した跡部に付き合って跡部邸に泊まっていたとき、猫の前で『事』に及んだことがある。
そのとき不二は、跡部のベッドで転寝をしていた。
夏の午後である。
三階にある跡部の部屋の、バルコニーに続くテラス窓を開け放して、涼しい午後の風に白いレースのカーテンをはためかせながらふたりで午睡をする。
跡部はこういうことは他の女とは決してせず、不二とだけ『無のくつろぎの時間』を楽しむことがあった。
今日も朝まで体を繋げていて、午前中は遅くまで眠りの中にいたふたりである。
不二は今、ベッドの中で本を読んでいる跡部の隣でうとうとと夏の風を楽しんでいた。
ふいに、本を閉じた跡部が戯れに不二に覆いかぶさってきた。
目を開けて顔を向けた不二と、軽くキスをする。
「……」
こんな、恋人同士のようなじゃれあいも、ふたりの間ではよくあることだった。
そのとき、バルコニーを伝って、白い猫が部屋に入ってきた。
跡部家の家猫、エリザベスである。
にゃあん、と優雅に猫が鳴いた。
気位の高いこの白猫は、だが不二の前ではなぜかいつも可愛らしい甘えっ子に変身するのである。
跡部の体の下で、不二は猫のほうに目線を向けた。
眼を細めて笑んだ不二と眼を合わせて、猫はこくりと首を傾げた。
くすりと笑った不二の意識をさらうように、跡部は彼の髪をくしゃりと撫で、口唇をふさいだ。
不二は跡部の首にするりと腕を回して抱き締めた。
白猫の澄んだ金色の瞳が、睦み合うふたりをじっと見ていた。
ふいに跡部が猫わ見て言った。
「…こいつは俺のもんだぜ」
そうして不敵に笑った跡部は、不二を貪ることに溺れるのだった。
頭から肩、衣纏わぬ胸、腕。腹から脚まで。
口では決して伝えることのない『愛の証』を、ひとつひとつ不二の白い肌に刻み付けていく。
不二はそれを甘受し、跡部の本心を聞かされないまま、ただ彼の恋人代わりを務めている。
このときは、まだひとかけらも互いの情動など知る由もない。
そんなふたりを、ただじっと、猫だけが見ているのだった。
「…ぁ…っ」
不二の中に体を埋めた跡部が、その熱に溶ける感覚を心地好く味わいながら、より高みに不二を連れていく。
「…あ、とべ…もう……ッ」
激しい性感に目尻を濡らした不二が、震える手で跡部を抱き締める。
「あん? まだだろ?」
ことさら優しく、意地悪げに囁いた跡部が、不二の弱点を擦り上げた。
「…ぁあッ」
いやいやをする不二の肉棒に手を添えて解放をせき止め、跡部は限界を超えさせて不二が泣きだすのを愉しんだ。
「猫が見てるぜ」