不二受短編2

□アドリブ(蔵不二)
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そして今日、撮りの本番が行なわれることになっていた。

「不二クン、おはようさん」

関東のスタジオの一室。
学校を模したセットの中で、不二は白石と挨拶を交わした。

「コンセプトは不二クンの片思いやろ。俺の好きなとこ言うてみ」

冗談混じりか役作りか、白石が不二の緊張をほぐすように会話を振ってくる。
こういうところが男優たちに慕われる所以なのだ。

「うーん、男の色気かな。抱かれたいって思うような」

不二は、当たり障りのない言葉を返そうと努めて平静を装って答えた。
内心、心臓に悪い問いだと思いながら。

何故なら不二は、白石の出演ディスクを全部持っている。
本当の『片思い』だったのだ。
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