不二受短編

□★他校生(跡不二)3
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 跡部の返事は「お試し期間でいいなら付き合ってやる」というものだった。
 それでもいいと『体』から入ったこの関係。
 付き合っているうちに跡部のほうでも不二を憎からず思うようになり、先日晴れて「本当に」付き合うことになったのだが―――。
「おい跡部。彼氏が浮気してんで」
 悪戯な忍足の声が、跡部の耳元に囁き込まれた。
「…あん? くだンねぇこと言ってんじゃねえよ」
 跡部は顔をしかめていなしたが、その視線の先には、箸を忘れた手塚に、周りにはやしたてられて「あーん」の状態で食べさせている不二の図があった。
 まるでカップル扱いされている手塚と不二の仲睦まじい様子は、不二にその気がないことが分かっていても、やはり跡部には気分の良いものではなかった。
 跡部はため息を飲み込むと、視線を青学から離して他に注意を向けた。


 不二は跡部の機嫌が悪いのを敏感に感じ取っていた。
 練習試合が終わって迎えに来てくれたきり、跡部は一度も不二のほうを見ようとしなかった。
 不二は一抹の寂しさを感じながらも、跡部の部屋のソファで静かに跡部の隣に座っていた。
 ソファは柔らかくて座り心地が好かったが、今の不二にはその心地よさがどこか心許なかった。
 跡部は機嫌が悪いと無口になる。
 あまり不二の前でそうなることはなかったが、たまにこうなると、その度に不二はもどかしい思いをする。
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