不二受短編

□★グランドスラム(リョ不二)
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「今夜は、ご褒美たっぷりくれるんでしょ?」
愛しい男の芳しい柔らかな匂いを嗅いで、リョーマは嬉しげに囁いた。
リョーマと不二は長年の恋人同士だった。
リョーマに惚れ込んだ不二が、自らの道をリョーマとともに歩くと決めたのはリョーマの高校卒業と同時だった。
手塚もリョーマと同じくプロ選手としてプロ世界入りしている。
不二がリョーマとともに彼のコーチ兼マネージャーとしてこの世界に入ったとき、ふたりが恋人同士だという事情を知る菊丸以外は皆驚いたものだ。
リョーマと一緒に世界を飛び回って、リョーマの敏腕マネージャーとして、不二も確実に実績を上げていった。
リョーマと恋人になったおかげで英語も堪能になった不二は、ときにはリョーマの代理として雑誌の取材に答えたりもする。
リョーマのコーチがリョーマ並みのテニスの実力を持っているということは、一部の関係者の間では有名な話だった。
「越前。いいの? ひっきりなしにお祝いの電話が入ってるのに、留守電にして」
「いいの。今日はアンタに存分に祝ってもらうから」
ふたりの愛の巣はニューヨークにある。
「…そうだ」
不二の首筋から顔を上げたリョーマは、ベッドを降りて机の引き出しを開けた。
ベッドで半身を起こした不二の上に再び乗って、上眼遣いに小さな箱を差し出す。
「受け取って」
「……」
不二が箱を開けると、ダイヤモンドの付いた銀のリングが入っていた。
「やっと約束が果たせた。――俺と結婚してください」
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