不二受短編

□俺様と俺(跡不二)
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 ぼそりと不貞腐れたように跡部が言った。
「おまえに」
 束の間、なんともいえない沈黙が落ちる。
「きみさ、その…ぼくに似た子を喰うの、もうやめなよ」
 頬杖をついて不二が呆れたように言った。
「だったら、オメーが相手になんのかよ」
「…ぼくがタチなら、考えてもいいけど」
 不二の顔を、跡部がじっと見つめる。
「俺様がネコになるわけねぇだろ」
 当たり前だと跡部が言った。
「体格差を考えろよ、オメー」
「要は気持ちの問題だと思うけどな」
 ぼくに抱かれてもいいと思うくらい、ぼくのことが好きなんだったら、考えてやってもいい。
 不二の言い分に、跡部は黙り込んだ。
「…………突っ込まなくていいから、触らせろ」
 跡部がようやく出した言葉が、それであった。
「だめ」
 わずかに口角を上げて、不二が言った。
 不二の綺麗な顔を、跡部がじっとりと眺める。
「おまえ、俺のこと好きなんだろ」
「忍足よりはね」
 不二と忍足は仲が悪い。
 というか、互いに腹に一物あるのが気に食わないというのが実際のところなのだが、それこそお互い様である。
「はぐらかすな。恋愛感情持ってんだろ」
 跡部は真剣な眼で不二を見つめていた。
「持ってないって言ったら?」
 不二が、その視線を受け流すように笑う。
「……」
「嘘だよ。持ってる。…好きだよ」
 頬杖をついたまま、眩しげに眼を細めて不二は跡部を見つめ返した。
 跡部は不二のこの「好きだよ」に弱い。
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