トリブラ

□尊いモノ、それは儚く…
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見える何かが在るからこそ人はそれを信じようとするのかもしれない





【尊いモノ、それは儚く…】





二人でこうして話すのは何ヶ月ぶりか。
逢う数回、彼女は私を連れ、宿舎の隣にある小屋の上でこうして話を交わす。

しかし、今回の事についてはどこか静けさを漂わせ、いつもとは違って何処かを見つめていた。


「もし…人の魂が見えるとしたらどんな感じなんでしょうね」


目線は合わない。だが、小さな口から出た言葉に、言葉が詰まった。見透かされている。

今回のことに。
だがそれも事実。
帝国の戦いまでの日々の中、いくつもの死に直面してきた。
ただ彼等に゛安らかな眠りを…゛と唱えて、それで本当に安らげる眠りについているかなどとは分かりはしない。


「見える分にはいいかもしれないけれど、時として辛いものまで見えてくるでしょう」

「本当に?」

エステルは首をかしげて神父に問いかける。

その問いかけに自分でもその場面に直面した事があるかの様に静かに『ええ』と頷いた。

その瞬間といったら喉に爪を突き立てられて息が詰まり、

もし自分が背負ってきたモノが彼女に振り掛かってきたら、彼女は拒絶し顔を覆い隠してしまうだろう。



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