Pr.

□心の雨
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雨が降ってる…」


聖堂へと続く長い廊下
雨の音がかすかに聞こえる

雨の日は憂鬱だ…

「憂鬱だね…アベル君」

背後から声が聞こえて身を翻す…
そこには、海泡石のパイプを片手に、にっこりと笑う
男が立っていた。

「?!…き…教授…?!」

いつの間に立っていたのか…
気配すら感じなかったのに…

「フフ…驚かせたかね…?ところでアベル君…どうして君はそんなに辛気臭い顔をしているんだい?」

「え…」

2人以外に居ない長い廊下…

雨音だけが耳に届く

「あ…その…」

「雨が降ると痛むのかね…?」

「…。」

教授の言葉に胸がグッ…となる…


「言いたくなければ言わなくてもいい…」

「教授…」

フッと微笑み窓の外へと視線を投げる…そして


「僕はまだそんな痛みに遭遇したことがないのでなんとも言えないが…」


「…。」


「まだ若いのに…そんな痛みを抱えて大変だね君も…」


教授だってこんな想いしたことが無いわけが無いだろう…

現にケイトさんが…


「あまりに酷かったら病院に行く事を勧めるよ」


「…。教授…なんのお話でしょう?」

長身のひょろりとした体がグネリ…と横に折れ曲がる。
話を聞いているとどうも…何かが違うようだ…

「ん?…雨が降ると関節が痛むんだろう?…そんな辛気臭い顔をしているからつい…。違うのかい?」


「あはぁはぁ…えぇ…そうです…ズキズキっと…って!教授!」


「あはは…!冗談だよアベル君。」


持っているパイプに火をつけると肺の奥に煙を吸い込んだ

「フゥー…」

「…教授…此処は禁煙ですよ?」

白い煙が辺りを漂う…
アベルの言葉に「僕にだってたまには逆らいたいときがあるのさ…」と、苦笑いを浮かべながら肺に煙を送り込んだ


少しの間沈黙が流れる
サー…と雨の音が、疼く心をさらに煽る


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