夢小説

□一章
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私たちは二人で一つの存在だった。






綺麗で、芸達者な姉。周りの人と良く溶け込む事が出来る。
姉よりは綺麗とはいえないが、可愛らしい風貌でいた妹。更に、芸稽古は苦手ではいたが、物を覚え、文学に才を持っていた妹。
家は、呉服屋で父も母も優しくて毎日が楽しかった。






でも、私の視界は赤しか映らない――――




いつから狂った?


いつから姉様は私を――――…、




ホウホウと梟が鳴く、暗い町外れの道に男達が二人。服装は至って普通。一人の男が少し不安そうに、「なあ。本当にここに高杉がくるのか?」…と、口を漏らした。
――どうやらこの二人、高杉晋助に会いに来たらしい。怖いのかと、男の右側に立つ者に咳払いをされ、ハッとして視線を下に落とした。


「そうらしいって話だ。にしても可哀想な奴だな。こんな捨て方する位なら、俺達が可愛がってやりたかったよ」


こんな、――と男達の視線の先には14、5歳位の女のコがいた。項垂れる様に、冷たい風になびく髪。家屋の壁に持たれたままの顔は下向きのままだ。



「―そ、それもそうだなァ…」


顎を掻き、男が笑うと、また一人笑う。




「穣ちゃんすまねェな。おじさんに少しの楽しみをね、へへ……」



弱音を吐いていた奴が楽しそうに笑っていた。どうせ、暗闇で見えねんだ。そう、膝を曲げて地面についた直後だった。



「ぐ、ッあアアァァっ!!!!」


「‥‥な―‥、」


自分の隣に居た相方が痛みに叫ぶ。斬られたであろう部分から、吹き出た血が顔や着物に飛び散った。ドサッと何かが倒れる音―。隣に居たものがいない。ヌチャり、頬を撫でると生暖かくて、指を見れば、震える指に血がベッタリついていた。


「‥ぁ、あ、」


一体何が起きた?一瞬の事で思考がついていかない。



「あーらら‥、どうやらハズレのようですね」

「ふむ‥、しかし縁者たる者が居たようだが、一人消したようだな?」




砂利を踏む音と気配。誰も居なかった場所。そこに立つ者達へ向ける驚異な視線。
そこに立つるは「随一の策略家」武市変平太「人斬り万斎」河上万斎「紅い弾丸」来島また子。三共、高杉の配下だ。
――月明かりに姿何とも怪しかろう。頬に滴る汗など気にしていようか。乾いた口から喉に唾を送った。


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