頂き物
□お兄さんがこんなに優しいわけがない
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「お姉さんお兄さんと会うのは控えたほうが良いですよ?、さもないとあの変態の事です、絶対にいつか襲ってきますよ?」
私がそう言うとお姉さんは間髪いれずに予想外の返答をしてきた
「めっ! だよ? あやせちゃん。あやせちゃんは京ちゃんの事を本当に真剣に見た事があるの?、見た事があるなら絶対にそんな事は言えないよ? 京ちゃんはね、誰にでも
優しくて優柔不断だけど、だけどね? 絶対に困っている人は見捨てない、とっても優しい、優しすぎるくらい良い人なんだよ? だからあやせちゃんが相談があると言って
断った事なんで無いでしょう?」
そう言って「ははは」と乾いた笑いを漏らすお姉さん、自分でも最後が支離滅裂になっている事に気がついているのだろう
だけどその時の私はそんな事を考えている暇は無かった、どうして?
その通りだ、なんでお兄さんは何時もあんなに酷い事を言っている私の相談を受けてくれるのでしょう
か……。
結局その場で答えはでずしかたなくこの方法、お兄さんと一日過ごして何が目的かを突き止める事にしたのです
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私は何とか冷静さを取り戻し、もう一度お兄さんを見た
お兄さんは何もする事が無いらしく、ベンチに座ってカバンから本を取り出し読み始めた
どうせそれもいかがわしい本なんでしょ?
…………、でもちょっと日陰で本を読んでいる姿は格好良い……ってなんですか、何を思っているのですか!?私!!
そこで私はさっきよりも大きく頭を振った「騙されちゃ駄目です!、騙されちゃ駄目です!」と呟きながら
なんとか邪悪な考えを取り除いた私は、今そこで欠伸をしているお兄さんを睨む。
よっぽど暇なのだろうか、当たり前だ、なんでこんなに早く来ているのか不思議で仕方ない。
そんな事を思っていると、お兄さんに小さな子供が近づいていく。それもよりによって女の子だ。
あ、危ないですよ!、そこの子!、そのお兄さんに近づいちゃいけません!!
居ても経ってもいられずに思わず立ち上がる私。
だがそんな私にあり得ない声が届いた
「よーし!!、今日は何で遊ぶ!?、今日も兄ちゃんはある人を待っていて暇だから何でもしてやるぞ!?」
京介さんのそんな優しい、甘すぎる声が
その声を聞いて私は、さっきまで危険だと思っていて焦っていた心は一切消えて、自然と顔が綻んでしまうのを自覚してしまう
そして今まで薄々思っていた事が真実だと確信してしまう
『どうしてですか?、どうしてそんなに優しいんですか?』
そう言おうとしたが、出たのはただの吐息、……何回試しても一緒。吐息は風に溶けて消えるだけ
お兄さんが桐乃に卑猥な趣味を教えた? そう思ってた?
違う、何もかも違う、ただ、ただ、私は甘えてたのだ、お兄さんの優しさに、心に。
ただ、お兄さんを私の黒い感情の捌け口にしていただけだ。
いつの間にか溢れていた涙が止まらない、落ちて、地面に黒い染みを残して消えていく。繰り返し、繰り返し。
溢れて止まらない涙、私は思わず踵を返して走り去ろうと足に力を入れた
「もう帰るのか!?、ちょっとは遊んでこうぜ!」
そう聞こえたと思ったら頭に何かがぶつかった、結構勢いがあったのか私は前のめりに倒れてしまう
ポンポンと私の前を跳ねるサッカーボール。
「なにするんですか!!」
私は反射的にそう叫ぶ
「あやせたんが俺を呼んだのに勝手に帰ろうとするからだろ?」
「気持ち悪いからその呼び方を止めてください!!」
思わず出てしまった私の毒舌、だがお兄さんはそれすらも笑い飛ばしてこう言ったのだった
「へいあやせ!、パスだ!」
私はつい笑ってしまう顔を隠しながら思いっきり蹴り返してお兄さんのもとに走っていった