イナイレ

□殺戮夜
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「ん?今日のカレー、なんか味が苦くないっスか?」

「そうか?」

「どうせ木暮のいたずらだろ」

その数秒後。イナズマキャラバンのメンバーの口は鮮血に染まった。
染岡は何が起きたか解らず、ただひゅうひゅうと荒い息を繰り返す。

(吐きたい・・・・・・。気持ちわる・・・・・・。なん、なんだよ・・・・・・、一体)

ピントの合わないカメラのように霞む視界。その中で聞こえる、不確かな複数のうめき声。

(くそっ、意味わかんねえ)

ガリガリと、誰かに爪を立てられているように心臓が痛む。

(・・・・・・ちきしょう)

染岡は脂汗の止まらない手で、心臓部分に当たるユニフォームをきつく握りしめた。
それは、苦しみからではなく自分を奮い立たせるため。
そして染岡は、まず現状を把握しようと。
痛みからどうしてもしてしまうまばたきから止めることにした。

「ふっ、ぐっ・・・・・・」

唇を噛み締め、ぐっと目を見開く。
と、

「ふ、ぶき・・・・・・?」

目の前には染岡を見下ろすように、あるいは見下すように――吹雪が立っていた。
そこでようやく、染岡は自分が椅子から落ち、地べたを這っていることに気が付いた。

「なーに見てんだよ、染岡ぁ」

「っつ!」

吹雪はにやにやと笑い、染岡の頭に片足をのせた。
その笑みと比例していくように、足の力はぐんぐんと強さを増していく。

「頭潰して、脳みそぶちまけてやろうか、あ?」

はったりでも嘘でもなく、本気なのは圧迫感で解った。
頭蓋骨が地面にめり込んでいき、眼球がきゅうきゅうと変な音を出し始める。

「お前らが悪いんだぜ?お前らが原因なんだ。お前らが追い詰めたからなんだ。あのまま俺と士郎の二人だけなら、全部上手くいってたのに。
いや――これからも上手くやっていくんだ。俺が士郎を助ける。俺だけが士郎を助けられる。俺だけでしか、士郎は助けられない」

ひっきりなしに喋り続ける吹雪の言葉は、耳鳴りが発生している染岡にはあまり聞こえてはいない。
それでも染岡は、この吹雪が士郎でないことは解った。姿は吹雪士郎でも、明らかに違う。

「てめ、エイ、リア、か・・・・・・?」

最後の力を振り絞った染岡の問い。
それをあっさりと吹雪は無視した。

「俺は、お前が一番嫌いだった」

「ふ、ああっあ!」

吹雪の足が地面に着いた。骨の砕ける音と、肉を潰す音と共に。

「士郎が、お前を一番好きだったから」

吹雪は地面に靴の汚れをこすりつけながら、不安定な声で呟いた。
その頃には辺りに散らばっていたうめき声も消えており、吹雪の呟きを聞く者はいなかった。

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