イナイレ
□合宿と怪談
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捏造性格設定確認のために書いた文なので、ヤマナシ、イミナシ、オチナシです(泡)
***
真夜中の学校。
ぼんやりと光る、一本の懐中電灯だけが頼りの教室。
床には敷き詰められた布団。
時折り聞こえるのは、布の擦れる音だけ――
「これは、実際にあったお話です」
神童はそんな重々しい雰囲気の中、ゆっくりと口を開いた。
「・・・・・・十年ぐらい前になりますが、補習のために居残りをしている生徒達がいました。
とは言え、元々補習を受けるような、やる気のない生徒達です。ただ椅子に座り、時間が立つのを待っているだけ、といった具合でした。
先生も先生で、面倒臭そうに指導をしていたそうです。
それでも――いえ、だからこそなのかもしれませんが、補習は問題なく淡々と進み、最後のシメの小テストとなりました。それを提出すれば、晴れて補習は終了です。
――そして。
時間が立つにつれ、一人、また一人と教室内の人数は減っていきました。
グランドで響いていた運動部の声も、もう今となっては聞こえません。
やがて最後の一人、仮にA君としておきましょうか。A君もテストを先生に提出し、補習を終えました。
先生は、
「まったく、私はバスにごほんごほんっ、今日は用事があったのに、こんな時間まで付き合わされるなんて――」
と、ぶつぶつ言いながら教室を出ていきました。
A君も帰るため、真っ暗な外に出て行きました。
学校外ならば街灯が立っているかもしれませんが、誰もいないグランドでは月明かりだけが頼りです。
「嫌だなあ・・・・・・。誰もいないのに、銅像の周りで人の声が聞こえるって噂、思い出しまったよ・・・・・・」
昼間に聞けば笑い飛ばせてしまう怪談話も、今じゃ不安の種にしかなりません。
A君は心細くなり、早く帰ろうと急ぎ足でグランドを突っ切りました。
すると、誰もいなかったはずのグランドで声が聞こえてきました。
A君はよせば良いのに・・・・・・思わず銅像の方を見てしまいました。
「ひっ、ひいいいい!」
銅像の周りに、たくさんの人が集まっていました。
「さ、さっきまでは誰もいなかったのに!!」
彼らはA君の悲鳴に、一斉に振り向きました。
A君と彼らの距離は約二十メートルほど。
それでも、その顔は。
うっすらとした月の白い光が降り注ぎ、はっきりと見えました。
人間の顔と思えぬほど、真っ赤に腫れ上がった化け物のような顔が――」
と、神童がそこまで話したところで。
「うわあああああだド!」
天城の絶叫が、教室中に響き渡った。
「おいおい天城、もしかしてビビっちゃってんの?」
「お前が突然背中を押したからだド!」
神童の持つ懐中電灯に照らされ、南沢はニヒルに笑う。
「お前って、本当からかいがいがある奴だよな」
「やかましいド!」
「――南沢、もうその辺にしとけ」
二人を仲裁をしながら、三国は教室の電気をつけた。
眩しさでまばたきを繰り返す一同と、やれやれと肩をすくめる三国。
「そんな悪ふざけをしていると、本当にお前のところに幽霊がやって来るぞ?」
その接し方は、手のかかる子供を持つ保護者そのもので。
対し南沢は、「はいはい」と何食わぬ顔で、あっさり退いた。
肯定でありながらの完全否定。むしろ、間違いなく三国を馬鹿にしている。
「はいは一回だ!だいたいお前はな――」
――結果、火に油を注ぐ形となり、南沢への説教タイムが始まった。
そんな三国の顔を。
南沢はにやにやと愉しそうに、悠然と眺めている。
普通、怒られている人間は笑顔など浮かべない。
・・・・・・こうなることを解った上で、南沢さんはやっているんだろうなと。
神童は、思った。
***
「ねえねえ天馬。さっきの怪談って、本当だと思う?」
三年勢が好き勝手に喋る中、西園は隣にいる天馬に小声で話し掛けた。
一応話をしてくれた神童に気を使ってのことだったが、件の人は三国と南沢を注視しているので、気にする必要はなかったわけだが。
そんなこととは露知らず。天馬も小声で西園に答えを返す。
「うーん・・・・・・。どうなんだろ?確かめようにも、銅像があった場所なんて知らないからなあ」
「・・・・・・確かめるって、天馬はちっとも怖くないんだね。すごいや!」
西園は感心し、両手を叩いて言った。
「僕も幽霊を完全に信じているわけじゃないけどさ、夜の学校で怪談話の確認作業まではできないよ」
「えええ!?す、すごくなんかないよ!それに俺も幽霊はいるとは思うけど――そんな、怖くないっていうか。見たこととかないし」
西園に誉められ、天馬は照れながら頬を掻く。
そんな二人の会話に割り込むように。
「――くっだらねえー。幽霊なんているわけねえじゃん」
と、倉間が冷ややかに空気を切った。
「もしかして、夜中に一人じゃトイレも行けないとか言わねえよな?マジねえわ」
天馬と西園を快く思っていない倉間は、ここぞとばかりにずけずけと悪態を巻き散らす。
二人は相手が先輩であるため、何も言えず、
「・・・・・・」
「・・・・・・」
しょんぼりと眉を落とし、困り顔を互いに見合わせることしかできなかった。
と、そこへ。
「まあまあ倉間、口はフラグの元って言うし」
助け船を出したのは、浜野だった。
ことなかれ主義の彼がこうして口を挟むのはめずらしい。
それ故、倉間は「ちっ」と舌打ちだけで済ませ、背中を向けながら寝っ転がった。
「・・・・・・はあ〜っ・・・・・・」
天馬と西園の長い長いため息。そうしてようやく緊張の溶けた二人。
二人は、はにかむような笑顔で浜野に頭を下げた。
「あの、その、なんていうか――ありがとうございましたっ!」
「別にー。話し声聞こえてたら、寝られねえじゃん?」
ツンデレではない浜野。とどのつまり、本心である。
「・・・・・・」
掴み処のない先輩に、二人は出した笑顔を引きつらせた。
***
「お前らー、もう寝る時間だぞー」
がらりとドアが開き、教室に入って来たのは円堂だった。彼の寝る場所は、倉間と西園の間である。
一番体格の良い円堂ならば、小柄な者が隣の方がぶつからずに済むだろう。という安直な理由からだったが――
(最悪)
勿論、円堂嫌いの倉間にとっては冗談ではない配置。
しかしそこは二年生。三年生に言われれば、首を縦に振るしかない。
(・・・・・・まあでも)
「寝るだけで何するわけでもねえし――我慢するか・・・・・・」
ため息を一つ溢した倉間。
されど、その考えは甘かった。
電気が消されると、練習で疲れた体はすぐさま眠る体勢に入っていった。
あちらこちらで寝息も聞こえ始め、倉間も両の目を閉じる。
と――
「・・・・・・なあ、やっぱこうやって皆で飯食ったり枕並べて寝たり、サッカーやったりって、すっげえ楽しいよな」
囁くように、円堂が言った。
てっきり西園に言っているのかと思い、倉間は返事をしないでいたが、
「倉間もそう思うだろ?」
「・・・・・・・・・・・・」
違ったらしい。
ならば、寝たフリをするまでだ。
「そういえば倉間のシュート、今日はよく冴えてたぞ?お前のサッカーが好きって気持ちが、よおおおく出てた」
「・・・・・・・・・・・・」
「倉間は小柄でスピードの切れが良いからな、明日はそのスピードを伸ばす練習をしようか。あ、それともスタミナを上げるメニューを――」
「あーもー、うっぜえええええっ!」
放っておけばいつまでも喋り続けそうな円堂に、倉間は半身を起こして怒鳴りつけた。
となると、
「倉間、うるさいぞ!」
「・・・・・・っ!?」
三国に怒られた倉間を見て、横で吹き出す円堂。
「てめえ、わざとやってんだろ」
「ははは、悪い悪い」
昔は天然で人の心を柔らかくしていた円堂も、今は意図的に出来るようになっていた。
「それじゃあまた明日な、倉間」
しかし、その笑顔に嘘も作為もない。
十年前と変わらない、本物の笑顔。
「・・・・・・ガキかってんだよ」
倉間は横目で盗み見ると、ぽつりと呟いた。
――それからしばらくして。
全員がぐっすりと眠る中、倉間は尿意に襲われていた。
「フラグ回収か・・・・・・!!」
ツッコンでみるが、当たり前だが尿意は消えない。
(まあ、別にいいけど)
(生憎幽霊なんて、信じてねえし)
倉間は起き上がると、枕元の懐中電灯を手にし、颯爽な足取りで廊下に出た。
そこで、足が止まった。
「・・・・・・し、信じて、ねえ――し・・・・・・」
廊下には。
黒に黒を重ねたような、先の見えない真っ暗闇。
もしもこのまま進んでしまったら、神隠しにあってしまうんじゃないかと想像が広がるような、闇。
倉間の頭に、自分が映る。
誰にも気付かれず、一人、暗闇に消えていく自分の背中。
――躊躇。
頭で考えるのと、実際目にするのとでは、闇に対する体感温度は全く違った。
「ちっ」
倉間は短く舌打ちをすると、誰かを起こそうとドアに手をかけた。
だが――
「浜野は呼べねえし、速水は怖がりだし・・・・・・誰もいねえじゃん」
今となっては辞めた二軍が恨めしい。
恋しいとは言わないところが、倉間である。
「くそっ、あいつら辞めやがって・・・・・・!!っていうか、どうして俺がこんな目に合わなきゃなんねえんだよ!」
ただ単にトイレに行きたいだけなのに、どうしてこんなに頭を悩ます必要があるのだろうか。
いっそ音を立てて全員起こしてやろうか。
そう倉間が壊れかけたとき、
「お前、何一人で踊ってんだ?」
円堂が教室から現れた。
「ねえよ!」
倉間はキシャーと猫の威嚇のように言い、ふと、
「あんたこそ何やってんだよ」
と問いかけた。
もしもこれで円堂がトイレに行くために出てきたのなら、連れションの大チャンスである。
嫌いな奴と言えど、廊下で漏らすよりは遥かにマシだ。
「え?あ、俺?俺は廊下で気配がしたから、目が覚めちまったんだ。
でも、倉間だったんだな。じゃあおやすみ。
お前も早く寝ろよ?」
「やっぱりお前なんて大っ嫌いだ!」
「なんだよ急に」
倉間はわなわなと震え、円堂を睨みつけた。
まさか、トイレに行くのが怖いから一緒に行ってくれなんて、口が裂けても言えない。言えやしない。
「・・・・・・あ、倉間。トイレに行くのが怖いから、一緒に行ってくれないか?」
一瞬、自分の心が読まれたのかと思った倉間は体を硬直させた。
「倉間?大丈夫か?さっきからおかしいぞお前。具合でも悪いのか?」
円堂はお構い無しに、倉間のおでこに手を当てる。
「熱はないよなあ・・・・・・」
「そ、そんなんじゃねえよ!」
動けるようになった倉間は、慌てて円堂の手を振り払い、
「つーか、トイレ行くんだろ?仕方ねえから一緒に行ってやるよ!」
と、人差し指を突きつけた。
果たして倉間はツンデレか。
円堂は「ありがとな」と笑い、二人は暗闇に消えて行った。
***
あとがき
円堂のトイレ怖いは嘘です(´ω`)
いつかそのことを倉間が知って、心が少し開いたら良いなと。
てか倉間は円堂監督と天馬をだんだんと好きになってツンデレ街道を行けば良いよ!
河川敷でみんなの気配を察知した円堂監督なら、廊下の倉間のこともきっと・・・・・・!!(無理がある)
あと、神童の怖い話の先生は冬海先生で、これからバスに爆弾仕掛ける準備にかかります(´∀`)
銅像下はイナビカリ修練場で、いたのは練習で怪我しまくってる円堂達。
化け物顔は、話に尾ひれがついた感じでというオチ。
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