Hurt〜中編小説〜

□1話
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夜中、オレがフラウの部屋を訪れた時、フラウはちょうど出かける準備をしていた所だった。


フラウはオレが入って来たことに気付いて、ドアの前に立つオレをふと見遣るけど、それもつかの間、すぐにフラウはオレから視線を外した。


最近、フラウの様子がおかしい。


正確に言えば、ミカゲが死んでちょっと経ってから、フラウの様子がおかしい。


ミカゲが死んでちょっと経ってから、オレがフラウを見かける回数は減ったし、フラウがオレに話しかける回数も極端に減った。


フラウはオレを避けてる。


そんなことくらい、このオレにだってすぐに分かった。


ミカゲが死んでから、オレは毎日毎日泣いた。


ミカゲが死んでも当たり前みたいに来る毎日に絶望して、呪って、泣いた。


そんなオレに手を差し延べてくれたのはフラウだった。


何度その手を振り払ったか分からない。


でも、最後にはその手をオレは掴んだ。


その時、気付いたんだ。


その時、大切なことに気付いたんだ。


「どこ、行くんだよ」


最近、フラウはコール狩りが終わった後、夜な夜な部屋を抜け出していた。


だけど、いつも朝になったら戻って来る。


カストルさんやラブラドールさんにフラウが毎晩どこへ行っているのか、と聞いても二人は悲しそうに表情を曇らせるばかりで。


フラウはオレを見ようともせずにオレの質問が聞こえないふりをする。


それが何だか無償に悔しくてムカついて悲しかった。


「答えろよ!」


イライラと声を荒げたオレに、フラウはやっと手を止めるとゆっくりオレを振り返った。


「‥‥っ」


それは、冷たく心臓に突き刺さる、氷のような碧い瞳だった。


初めてフラウから向けられる冷たい視線にオレは一瞬息が止まった。


だけどフラウはその冷たい瞳でオレを無表情に見据えたたまま、静かに口を開いた。


「お前には関係ねぇ」


ズキンッ


身体が、心が、胸が、痛かった。


痛くて苦しくて目の前が真っ暗になって何も考えられない自分に腹が立った。


(お前には関係ねぇ)


今さっき言われたフラウの冷たい言葉がエンドレスに脳内でリピートする。


「‥‥女の人の所に、行ってるのか?」
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