BSR短編

□ほすばさ(幸村)
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「あ、あの…」


なんでこの人、あんなに離れて座るんだろう。


幸村という人を指名したものの、なぜか彼は1メートルぐらい離れた所に座っている。
これじゃあ指名した意味ないんじゃ…。


とりあえず何か頼もうとメニュー表を開いてみた。





「幸村さん。お酒注ぎますよ?」


注文したお酒が来た。
幸村さんに近づき、グラスにお酒を注ごうとすると、


「え…あっ!そ、某、未成年だから酒は…」


まるで狼に襲われた小動物みたいな。
そんな風に幸村さんは震えている。


「あ、そうなんですか。わかりました…」


会話終了。
というか、幸村さんは私のほうすら見てくれない。


つまんないの。


1人でお酒をくいくい飲んでると、幸村さんが、


「申し訳ないでござる…」

「え?」


てゆーか、この時代に"ござる"って。
忍者じゃないんだから。


「某、おなごが苦手で…」

「あ…そうなんですか…。じゃあなんでホストを…?」


わたしが聞くと幸村さんは一瞬ためらったが口を開いた。


「就職に失敗してしまってな…」


幸村さんが弱々しく笑った。


「あー…最近不景気ですからね……」


こんなときなんて言えばいいんだろう。
多分、就職して安定した暮らしを送ってる私が慰めたところで
嫌味にしか聞こえないんじゃないかな…。



「でもいつか会社に入社してホストをやめようと思ってる」


やっと幸村さんが私の目を見てくれた。


「頑張ってください!私、応援してますから!」

「ああ。ありがとう」







そのあと、特に会話をしないで1時間ぐらい経った。
ほとんど喋らなかったけど、でも、幸村さんが隣にいるだけで落ち着いた。

初めて会ったときより、幸村さんは座る距離を縮めてくれてそれが嬉しかった。




「えっと、じゃあ、私帰りますね」

「あっ」


幸村さんが私の腕を掴んだ。が、すぐに離した。


「幸村さ、ん?」

「えっと、あの!」


無駄に大きい声で幸村さんは、


「また来てくれないか!?そのときは…そのときはもっと話せるようにしとくでござるっ!!」


その姿が無駄に可愛くて、


「はい!また来ますね!」






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