BSR短編

□泣かないで
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「蘭丸!」


顔にこびりついた血を拭いながら彼の名を呼んだ。


「えへへ、私ね、お父様から頼まれた暗殺してきたんだー!」


本当は暗殺なんて物騒な言葉を軽々しく口に出すものじゃないんだろうけど。
私の言葉を聞いた蘭丸は闘争心をむき出しにして突っかかってくる。


「蘭丸だってこの前の戦いですげーいっぱい敵倒したんだからな!信長様だって褒めてくれた!」


その証拠に、と蘭丸が金平糖を見せびらかしてきた。
私も何か自慢してやろうと思ったが、あいにく今は何も持ってなかった。


「へへ、蘭丸の勝ちだな!」


蘭丸が勝ち誇ったように腕組みをする。
その姿が無性に腹が立った。


「蘭丸なんてただのお父様の配下のくせに」


私なんてお父様の娘なんだから。そう言おうとして慌てて口を閉じた。


「お前、最低だな」


蘭丸が軽蔑したような目で私を見る。


「ら、蘭丸……」


後ろを向き、去ろうとする蘭丸の腕を掴んだ。
だけど、蘭丸は私の腕を弾くように振り払い、駆け足で去って行ってしまった。


どうしよう。
あんなこと言うつもりなかったのに。


お父様を独占したいという気持ちでつい言ってしまっただけ。
でもそれは言い訳でしかない。


「謝らないと……」


視界を滲ませる涙を拭い、蘭丸の部屋へと急いだ。


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