非夢

□哀を唄う女
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私は彼の妻になると、幼い頃から言われて生きてきました…




それに反抗し別の人を慕ったこともありましたが、彼と出会い私は彼に恋をする様になりました。私が彼と初めてお会いしたのは、彼が15の時でした。彼の灰の瞳と銀の髪に陽が反射して宝石の様に輝いていましたのを覚えています。


彼はとても優しい人です。それは出会った頃から変わりません。ですが私と一緒にいる時、彼が私以外を見ていることがよくありました。私がそれに気が付いた時、私は彼に恋しているのではなく、彼を愛していると感じるようになっていました。





彼が何を見ていたか、私はそれをしばらくして知ることになります。ある時、私は彼と一緒に彼の友人だという央魔の少女に会いに行くことになりました。正直に言うと、私にとって央魔とはいえ冥使には変わりがなく、まだ見ぬ少女を少し恐ろしく感じていました。



「は、はじめまして。レナ、です。」



ですが、緊張して硬くなっている少女を見て私は認識を改めました。彼女は確かに央魔で冥使とあまり変わりのない存在でも、ふわふわと冬の日差しの様に柔らかい少女はの笑顔はただ愛らしいもので、私の恐怖心を払拭していきました。



「フレディのお嫁さんなら、あなたも私の家族よね」



彼女の言った言葉に暫し固まっていると、彼女は慌てて、謝りました。央魔に家族なんて言われたくないよねっと。しゅんとなった彼女に私は慌てて否定しました。驚いただけで、嫌だった訳ではないと。



私の言葉にまた笑顔になった彼女を彼は私が彼を見るのと同じ瞳…愛する者を見る瞳で見ていました。彼は彼女を、レナさんを愛していたのです。




それでも彼は私と結婚し、オーゼンナートの血を残すために、彼女への思いを気が付かないように誤魔化していました。彼がレナさんのことを姉と呼ぶのはその境界線の一つなのでしょう。



私が彼に愛されていないとは思いません。ですが、彼が私よりもレナさんを愛しているのは事実です。もし、私かレナさんかどちらかしか救けられない状況に陥ったら、彼はレナさんを救けるでしょう。




愛している人が別の人を愛しているということは女にとって苦しく、醜い嫉妬の根源です。けれども私はあの真っ白なレナさんに黒い感情を持つことが出来ません。私は、永遠に穢れの無い少女であるレナさんを嫌えないのです。





相手にぶつけられなければ、私が生んだ黒い思いは、私が飲み干すしか無いのです。












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