非夢

□温い幸せ
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「うぅう…分かんない…」



レナの呟きは小さなものだったが、同じ部屋で読書をしていたフレデリックには十分に聞こえた。



「ねえちゃんどうしたの?…数学の問題?」

「アーウィンがこれくらいは出来なきゃ駄目だって…」



レナのノートを覗き込んだフレデリックはレナの言葉に、相変わらずだなぁと、に苦笑を浮かべた。


「あー、これはね、こっちの公式とコレをあわせて使うんだよ」

「ふぇ?」



するすると問題を解いていくフレデリックにレナは一瞬ぽかんとした顔をした。



「ほらこうすれば分かりやすいでしょ」

「本当だ…」



フレデリックが問題を解いた方法を見ると、レナは小さく感嘆の声をもらした。その問題は分割されてとても分かりやすいものになっていた。



「ここは応用だから、解き方にコツがいるんだよね」



そういいながらフレデリックは式をくるりと変形させた。



「あっ、それじゃあコレはそっちと同じだからこう…?」

「そう、当たりだよ。ねえちゃん基礎はできてるんだね」

「わ、私だってそれ位は出来るもん!」



レナは拗ねて頬を膨らませたが、すぐに表情を崩し、不安を覗かせる瞳で言った。



「私もフレディみたいに出来るようになるかな?」

「ねえちゃんは基礎が出来てるし、後は応用に慣れるだけだからすぐに出来るようになるよ」

「うん、私頑張るね!」

「頑張り過ぎて知恵熱ださないようにね」

「ださないよっ!」



フレデリックの言葉にくるくる表情を変えながらレナは答える。フレデリックはそんな彼女を優しい目で見つめていた。




「レナ、おわりましたか?」

「もうちょっと!」



レナはやってきたアーウィンに少し焦って言う…。アーウィンの方もそんな彼女を分かっているのか、慣れたような笑みを浮かべていた。



「その問題が終わったら休憩にしましょうか。」

「はーい。フレディ終わったらこの前の話の続き聞かせてね。」

「いいよ、終わったらね」

「うん、早く終わらせるから!」





三人の間には、午後の日差しにも負けないほどの和やかで、幸せな空気が漂っていた。









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