非夢

□少女を包む月
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ずっと私は鳥籠に飼われてる鳥だったの。



外の世界に憧れることはあっても、居心地のいい安全で幸せな世界から出たいなんて思わなかった。あのままだったらきっと、自分が鳥籠の中にいることすら気付かなかった。


今なら、それがいけないっていうのも分かるけど、その頃の私は創られた世界以外なにも知らなかったから、それが私にとっての唯一の世界だった。



だからねあの修道院に初めて行ったとき…、フレディに初めて会った時も、コレはただの悪い夢だって、目が覚めたらまた何時もの暖かい世界が広がってるって、そう考えてたんだ…


だけど、リズが死んで、アーウィンが冥使で、マシューを殺して…どんなに頑張っても現実はもう元には戻らないって分かって、今まで私がどんなに幸せな世界で生きていたか痛いくらいに感じた。


毎日体は苦しかったけど、アーウィンはいつも傍にいてくれたし、大切な友達と、たまにしか帰ってこないけどお母さんもいてくれた。無くしてから気付いたけど、あの部屋は、歪な愛に満ちてたんだと思う。




結局は、私を利用するために創られたウソの世界、だったけど…








「それでも、例え創られた世界だったとしても、本当のものもあったよ。」


一息に言葉を吐き出した私に、フレディは優しく、だけどはっきりとした口調で言った。


「ねえちゃんが友達を大切に思っていたのも、母親を愛したことも、ねえちゃんの友達が冥使の本能に逆らう位にねえちゃんを大切に思っていたのも全部、本当のことでしょ。」


フレディの言葉が私の弱い部分に染み込んでいくみたいで、心が痛くなった。


「だから創られた世界でも、それは本当だったよ」

「そう、だといいな…」

「そうだよ」


頬を伝った涙に、ねえちゃんは泣き虫なんだから、ってフレディは月の様に微笑んだ。







***
二人の友人が太陽なら、月はフレディがいいなぁって思った。

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