KANKORE

□初恋の咲き始め
1ページ/1ページ

 


初恋の咲き始め




まだ寒さが残る三月上旬。

間宮の店で提督になりたての観海がお品書きを見て悩んでいた。


「う〜ん、どれを食べようかなぁ…」
「ゆっくり考えてても良いのよ」
「じゃあ全部」
「こらこら」


間宮に注文しようとすると頭上で声がする。


「あら、長門さん」


声の主は長門型一番艦長門。


「こんにちは間宮さん」
「長門ちゃん!観海は自分のお給料で食べるんだから良いでしょ?」
「陸奥にも甘いものはたくさん食べるなと言われていただろう?」
「だって〜」
「では、別のものを頼んで半分こにするのはどうだ?味比べが出来るぞ」


長門がその提案をすると観海は渋々頷いた。







結局餡蜜とおしることアイスクリームを半分こし食べると観海が会計をする前に長門が払ってしまう。


「長門ちゃん、観海が払うのに」
「気にするな私が観海提督に馳走したかっただけだ」
「ごちそうさまでした」
「観海提督はちゃんと言えて偉いな」


長門は観海の頭を優しく撫でた。


間宮の店を出ると店の近くにあるまだ蕾の桜の樹を観海は見上げている。


「ねぇ、桜まだ咲かないのかな?」
「蕾が膨らんでいるから雪が降らなければ明日か明後日くらいには開花するだろう」
「そうなんだ〜長門ちゃんは何でも知ってるんだね」
「あぁ私も陸奥と同じ観海提督の秘書艦だからな」


観海の笑顔に長門も照れたようにまた観海の頭を撫でた。


「ねぇ、明日晴れて桜が咲いたら二人でお花見行こう」
「私は良いが二人で行くと陸奥が妬くぞ」
「秘密で行くの」
「あらあら、秘密で何処にいくの?」
「あっ」


いつまでも指令室に戻らない観海を探して陸奥が観海の背後から声をかける。


「陸奥、急に声をかけるな観海提督が驚いてるだろ」
「だって、二人だけの秘密なんてズルイわ」


陸奥は観海を背後から抱き締めて答えた。


「じゃあ三人で行こうよ!間宮さんにお稲荷さん作って貰うの!」
「あらあら、ちゃんとお仕事終わらせてからね」
「手を繋ぎたかったな…」
「あら?長門姉何か言った?」
「な…なんでもない!」


顔を赤らめ視線を桜の樹に向けて言う長門。


観海はそんな長門の手を握った。


「暖かいな…」
「長門ちゃんの手も大きくて暖かいよ」
「ふふふ、ありがとう」


長門は観海の暖かく小さな手をそっと優しく握り返す。




初恋の咲き始め。
(これが恋ならば私はこのまま彼女を想い続けたい…)

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ