OSOMATSUSAN
□チョロ松警部の事情
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チョロ松警部の事情
『兄さん…チョロ松兄さん』
チョロ松警部はこの声で朝目を覚ます、この声を聞くといつも泣いていた。
「また前世の記憶か…」
泣き腫れた目を冷やし顔を洗う、ペットボトルのお茶をカップに注ぎ口にした。
「生まれ変わっても記憶は残りチョロ松として生きているのは私だけなのか?」
前世の記憶があるのは悪い事ではないとチョロ松警部は思っていた、前世五男だった弟の十四松の声を聞くまでは…。
声が聞こえるようになったのは十四松鑑識官と再会してからだった。
彼との出会いはとある殺人事件の遺族でチョロ松警部がまだ巡査の頃からの付き合い、そして彼の名も十四松であるが前世の記憶はないらしいくチョロ松警部は少し寂しかった。
十四松鑑識官だけではない探偵おそ松も一松警部も新米刑事トド松も前世の記憶はない、ただ前世次男だったカラ松である人間とはまだ再会出来てないだけ。
前世の記憶がある人がこの世に結構いると聞いてはいた、だからチョロ松警部は別に嫌ではない。
ただ周りの人間はそうではなかった。
ピーンポーン
「はーい」
「俺です」
インターホンがなりチョロ松警部はモニターを確認すると十四松鑑識官が立っていた。
鍵を開けドアを開けるとチョロ松警部の姿を見て嬉しかったのだろう十四松鑑識官はいつも通り。
「チョロ松警部今日も暑くなりそうだね」
「うん」
「目が腫れてるけど…また前世の記憶ってヤツですか?」
十四松鑑識官はクーラーのリモコンを手にからかうように言う。
「別に関係ないだろ」
「関係ありますよ〜俺チョロ松警部の事愛すげーしてんですから」
「君はいつもそうだね」
「嬉しいから抱きたいけど仕事だから夜まで我慢しますよ」
チョロ松警部は今日非番だが十四松鑑識官はこの前の事件で拾えなかった証拠を探さないといけないらしく仕事となったらしい。
「十四松くんのおかげで事件の解決があるんだから頑張ってね」
「まぁチョロ松警部に言われたら頑張らなきゃって思うよ、じゃまた会いにきますから」
十四松鑑識官はチョロ松警部の唇に口づけると上着を羽織り部屋を出てゆく。
そんな彼の背中が前世の『十四松』と重なったが口に出来なかった。