黒河探偵事務所
□メイドの悲劇【前編】
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ポカポカ、陽射しがほどよく暖かい。今日はこれといった依頼もなく、珍しく暇なのだ。
黒河はデスクでうとうとしているし。
その膝の上で寝息をたてているポチ。
玲は黒河にと紅茶をいれている。
平和だ。
「助けてくださいッ!!」
「――っ!?」
第二章
メイドの悲劇【前編】
勢い良く開けられた事務所の扉から人が飛び込んできた。
半分夢の中へと旅立っていた黒河は、ズルリと椅子から落ちそうになり暫く目をパチクリさせていた。しかし直ぐさま立ち上がり、その人物の元へ駆け寄った。
――そのあと、デスクの下でひっくり返って気絶していたポチがいたとか、いないとか。
「どうなされましたか?」
「スッ、ストー……っカー……っ」
それを聞いた玲が、慌てて給湯室から出てきた。
「玲ちゃん、すぐにドア閉めて。早く」
「はいっ」
今日も、こうして一日が始まる――。