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□備えあれば憂いなし。
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それは、のんびり午後ティーを飲みながらテレビを斜め見して、夕飯はカロリーメイトにするか大豆バーにするか悩んでいる刹那だった。
なんの前触れもなく玄関の扉が大きな音を立てて開いたと思ったら、そこから勢いよく室内に滑り込むようにして…いや、勢いの余り横転してと言った方が適切だろうか。
俺の友人が一名、慌てた様子で俺の目の前に現れた。
…てか玄関の鍵は閉まってたんだが…。
あんな華奢な体でよく開けれたな。
どんだけ緊急事態なんだよ。

上から見下ろすからにして、猛スピードで走ってここまで走って来たらしく、目の前の友人は息をするのも困難な状況だ。
まったく、…仕方ないな。
こんな時はどうすればいいのか…んー。
そうだ。冷蔵庫の水でも与えてみるか。

とりあえず友人はそのままで、冷蔵庫から水の入ったペットボトルを一本持ってきた。適当にこのコップに入れよう。
そう思って近くのコップにそれを注ぎ込もうとしたが−瞬間、先程まで倒れ込んでいた友人がいきなり立ち上がり、こちらにタックルを仕掛けてきた。
おい、どうした。水は嫌いか。

反動で床に散らばる水。もったいないことを…。
「帝人お前…」
「駄目だ正臣!今はまだそれを使う時じゃないんだ!」
…は?一体全体何事?

…いや、今はそれより床の水を処理するのが先か。
近くの雑巾でそれを拭いておいた。

−で、
「いきなりどうした」
「あのね正臣。あれなんだ!あれがあれであれが…」
「うん。ちゃんと聞いといてやるからゆっくり話せ?」
「あれ」だけじゃさすがの俺にも伝わらんぞ。
友人を落ち着かそうとカロリーメイトを差し出してみた。
しかしそれを見るやいなや、目の前の帝人さんは卓袱台を両手でバシンと叩きつけ、見事に俺の飲みかけだった午後ティーをぶちまけてくれましたとさ。

はあ…。そろそろ殴り合いに発展してもおかしくない状況だよね?
つか、たんこぶ作っていいんだよな?
みーかーどーくーーん。

「−で、もう一度聞こう帝人。一体何があって言うのか、300字以内で簡潔に説明よろしくな」
目前の友人は頭にたんこぶをこさえてこちらを涙目で見つめている。
詳しく言うと、なんで殴るの正臣…みたいな目だった。

長い沈黙の中、ようやく帝人が口を開いた。
「あ、あのね正臣あれ「待った。“あれ”はナシな。日本語でおっけい」
先に釘を刺しておく。
ループは勘弁してほしいからな。
「え…えっとね、……−あれ?なんだっけ」

え。
 
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