復活!長編
□無関係とは程遠い
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まぁとにかく怪我で済むかどうかも怪しい危機は免れた。
当面の目的通り帰宅するとしよう。
そう歩みを進めたあたしだったが視界にとある人物を捉え再び足を止めることとなる。
「ちゃおっス」
リボーンだ。
塀の上に座っていて目線は若干高い位置。
あたしは少し見上げるようにして視線を合わせた。
「おはよ。今日はいつも以上に賑やかだね、上」
「まーな。モレッティっていう殺され屋が来てるんだ」
モレ…?
(殺され、屋……殺され?…あ!)
あぁ成る程!
それで雲雀か。
合点がいったと頷くあたしにリボーンが「知ってんのか?」と訊ねてくる。
それに咄嗟に「うん」と応えたが…いかん。この調子ではまたうっかり口走るやもしれない。
「そういえばシャマルが**について聞いてきたぞ。アイツとも知り合ったみてーだな」
「まあ」
「…おい」
「うん」
「撃つぞ」
「う、えっ、それはヤだ!;」
生返事に苛立ったらしい。
物騒極まりない発言に無心モードから一瞬で覚醒したあたしは力一杯の拒否をした。
口を開けば余計なことも言ってしまいそうで、そしたらまた怒らせるだろう不快にさせるだろうと…そう思ってのことだったのだがまさか裏目に出るとは。
(うぅ銃はズルい…)
項垂れるあたしに、一拍置いてリボーンは言った。
「ツナにもな、話した。お前がツナと知り合った日に」
え。
「異世界から来た一般人でちょっとした予知ができる」とあのいい加減な説明がツナにまでされたと言うのか。
予知が出来る時点で最早一般人の枠から外れていると思うのはあたしだけですか。
「…で、ツナはなんて?」
「あ、**ちゃん!!」
「!」
恐る恐る訊ねるあたしの頭上から声が降ってきた。
その声に彼だろうと確信を持ちつつ、所々焦げのついた二階部分を見上げ姿を捉える。
「噂をすれば…」
やはり、ツナだった。
まぁあたしが間違える訳ないけどな!
心の中のあたしがどや顔で呟いたのと同時、その彼の右隣から獄寺が顔を出した。
そしてあたしを視界に入れるや否や、
「げっ」
「失礼な」
「何でおめーに礼儀を尽くす必要があんだよ」
「別に尽くせとは言ってないしあたしも尽くさないしただ第一声があれじゃ大人になってから困るんじゃないかなぁとね。未来の右腕が聞いて呆れるんじゃないかなぁとね」
「う、うっせ!;オレは今も右腕だから問題ねんだっつの!」
「へぇ、将来はわからないのに!あたしが言ったのって例えだし」
すっかりこの感じがお決まりになってしまっている。
中学生と張り合ってどうするんだとは自分でも思うが変なとこで負けず嫌いが働くのだ。
そして然り気なく巻き込まれたツナは右腕というワードに困り顔。
あたしを予知者と信じる獄寺は"将来"と先を思わせる言葉に弱く「ぐっ;」と押し黙っていた。
いや実際わかんないんだけどね。
でも最低限の礼儀さえ覚えればどこの社交場へ行っても恥ずかしくない未来の右腕に、きっと君ならなれるさ。
…まぁそんなことは思っても言わないし都合上言えないのだが。
そうこうしていると今度はツナの左隣から新たな人影がぬっと覗いた。
「誰と話してんだ?」
地上と二階、距離を挟んでの初対面。
(高ッ…!)
その高身長はツナの隣ということもあってか遠目にも際立っている。
上げていた視線を更に上げて位置を訂正したあたしは、
「初めまして」
言ってぺこりと頭を下げた。
そうしてあたしに気付いた向こうは爽やかな笑顔と共に、
「ん?おう、初めましてだな!オレ、山本武ってんだ」
よろしく頼むぜ、そう懇切丁寧な挨拶を返してくれたのだった。
さっきの扱いが扱いだけに嬉しいじゃないか!
さすが爽やかの代名詞!…じゃなくて、そうだ名前。
「あたしは*****。こちらこそ、よろしくっ」
彼のような爽やかさは望めないが笑顔で返す。
うん、獄寺の舌打ちは聞こえなかった事にしよう。
さて挨拶も済んだことだしこれ以上居座る理由も無いだろう。
原作のシナリオにあるのならあたしはイレギュラーな存在、その点に於いても留まるべきではないと思う。
名残惜しさは正直あるがリボーンだって恐らくはそれを見張りに来たのだろうから。
「あー…と、それじゃあま」
また、と。
そう片手を上げ踵を返そうとした語尾に被って、
「**ちゃん、外じゃなんだし良かったら上がってかない?…部屋、汚いけど;」
はは、と苦笑いのツナからお誘いがあった。
一瞬驚くもその言葉を理解したあたしは反射的にリボーンを見ていた。
すると彼はあっけらかんと、
「オレが言ったことならもう気にしなくていいぞ。無駄だってのは元々わかってたからな」
「無駄…?」
「あがってけ」
…何だそれは。
あたしの葛藤何だったんだ…!泣
思いつつもお許しが出たことは素直に喜ばしくまた有り難いことであった。
関わるな、は実質取り消されていたとは言え語るなと釘を刺されればあたしにとっては似たようなもの。
うっかりが無いとは言えないからだ。
だから改めて、真実を知るリボーンからはっきりとした許可を貰えたことは幾らかあたしの心を軽くした。
制約が無いって素晴らしい。
(にしても「あがってけ」って…)
二度目の沢田家来訪。
お邪魔することは半強制的に決まっていた。