復活!長編

□無関係とは程遠い
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あたしが此処へ来た時点でシナリオは既に書き換えられている。
何が起こっても不思議ではない。



不思議では…ない、のか…?

いや、でもこれは…




ドガァン!




なんてタイミングで通り掛かってるんだ、と思わずにはいられない。


ここは沢田家前。
目の前にはトンファーを振るった直後の雲雀が。
斜め上方では爆発が。
この目でしっかり目撃した。
爆発は複数のダイナマイトによるものだ。

商店街に出掛けた、その帰り道の事である。


「やあ、また会ったね」

「ど、どーも…」

あたしに気付いた雲雀がトンファー片手に話し掛けてきた。
沢田家から賑やかしい声が聞こえるもそちらを気にする気配はない。

あぁそうだとりあえず何も見なかった事にしよう。
触らぬ雲雀に祟りなし。
挨拶は済ませたのだから問題はない筈だ、通り過ぎてしまえ。

今は先輩後輩であるのだから失礼な態度を取る訳にもいくまい、と思い「では」と会釈をしながら雲雀とその傍にあるバイクを迂回し塀ギリギリに沿って歩く。
しかし通り過ぎようとした所で、

「待ちなよ」

真横から声が掛かり去ること叶わなかった。
触らずとも雲雀の祟りはあるらしい。何てことだ。

だが呼び止められる理由があっただろうか。
あの日から遅刻も欠席もしていないというのに。
今もしっかり挨拶をしたし会釈もした。
どうしたと言うのか。

あたしは道幅限界まで離れたそこから雲雀へと身体を向け、背後を守りつつ話を聞く姿勢を取った。

短いその間に雲雀は大欠伸。
そして視線が合ったかと思うと、

「君、最近サボりが目立つようだけど」

ギクリ。
肩が跳ねる。

「えっと…あはは;」

笑って誤魔化すなんてことが通じる生易しい相手ではないと百も承知だがだからと言ってバレる嘘を吐く訳にもいかない。
そもそもこの乾いた笑いは気まずさから来るものであり、相手の言葉の肯定なのだ。

中身高校生のあたしは記憶や経験も十七年分を持ったまま此処に来ている。
中学校の授業くらいならば多少受けずとも学力に大きな支障は出ないのだった。

だからという訳ではないが唯でさえ眠気を誘う授業が退屈で仕方なく、屋上や図書室、保健室その他を憩いの場として利用していた。
…授業中に。

あの時の獄寺の気持ちがよくわかった。…が、決して!決してサボりがメインではない!
考え事をしに行って…たまに、寝てしまうだけで。

…とは言えるはずもなく。

サボりは事実。
そしてその事実は目の前の愛校心豊かな彼が標的とするに充分な理由であった。

「言ったよね。次はないって」

おおう;
つまりそのトンファーはあれか、あたしを咬み殺す為に出しっぱなしなのか。
道理で仕舞ってくれない訳だよ。

(よし、逃げよう…!;)

そう思った直後、どこからか並盛中学の校歌が流れた。


ピッ

「なに。……ふぅん、そう」

着うた、だと…。

校歌は雲雀の携帯着信音だった。
危うくお笑い芸人張りにずっ転けるとこである。

二言程度で通話を終えた雲雀は呆れたような短い溜め息を吐いてからえらく格好の良いバイクに跨がってこちらを向いた。
今の僅かな会話の間に一体何が起こったのか。
トンファーも気付けば仕舞われ攻撃の意思が見えない。

「君は本当に運が良いよ」

「へ、」

面食らうあたし。

雲雀は心成しか愉しそうな表情で、

「草食動物より害虫の駆除のほうが優先だからね」

それだけ言うと右ハンドルを捻ってエンジンをふかし、急発進して爆音と共に颯爽と去って行った。
あのスピードは恐らく規定違反だろう。
お巡りさん、彼の記憶からあたしの素行が消えるまで捕まえていてくれませんか…。


あれ、そう言えばメットもしてなかったような?
いやいやその前に中学生は免許取れない、はず…。


「…何でもアリですか」


(傍若無人なあなたが少し羨ましいよ…;)
 
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