復活!長編

□それらはいつも必然に
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片腕を負傷して過ごした約一ヶ月は苦労が絶えなかった。
友人には過保護なほどに心配されロンシャンにはやたらと絡まれ、それはまだ全然良いとして現実的な話、寝る時と着替える時には通常の倍の時間を要し何をするにも不便でならなかった。


しかしそれも過去のこと。
十一月は了平さんや花と知り合ったとある一件を差し引けば比較的平和に過ぎ去り今は十二月、と三日。
腕は既に完治済みである。

まぁあれだ、雲雀のトンファーを諸に受け止めて罅で済んだのは不幸中の幸いと言える。
更に言えば一ヶ月弱で治ったのだからあたしの回復力だって捨てたもんじゃないと思うのだが、雲雀が当たる直前で勢いを落としてくれたとかも可能性としてはあるのだろうか。
なんて。


数学の授業中、あたしは外界の声という声を遮断してこの一ヶ月を振り返っていた。
いろいろ不便だったがそう悪い事ばかりでもなかったな、と。

それは例えば、友人があたしの分のお弁当を作ってきてくれた事だったり、ツナ達と帰宅を共にするようになった事だったりする。

「そうだ、一緒に帰らない?鞄くらいなら持てるし」

そうツナに声を掛けてもらって以来成り行きというか何というか、腕が治った今もお互い若しくはどちらかに用事でもない限りは一緒に帰ることが常となっていた。
そこに獄寺や山本が居たり居なかったり…。

そして前より仲良くなったこの機会にとあたしはツナへ"ちゃん付け禁止令"を発令した。
付ける毎に軽いデコピンを一発、という仕様だ。
やる度獄寺には怒鳴られたが最近はツナも慣れてきたらしく頻度は格段に減っている。

本当はそういう縛りなくツナの自然体…リボーンやハルに対するように接してくれたら嬉しいのだけど。

(今はまだ、難しいかな…)



…――ところで。
あれからあたしは応接室へ行っていなければ近寄りもしていなかった。
運が良いことにその間雲雀に出会す事もなく、又下っ端風紀委員に絡まれる事もないまま現在に至っている。

自分でも吃驚な自己犠牲行為を取ってしまった事実が何となく気まずいと言うか。
相変わらずサボっていたし腕負傷中は着替えが間に合わず何度か遅刻もしていたから応接室に顔を出すのは二重の意味で好ましくないのだ。


でも、これからどうしようかな。

考えた所で特に答えが浮かぶ訳でもなく、思わず憂鬱な溜め息が漏れた。

「…***、お前久し振りに授業に出たと思ったら何だ。そんなに先生の授業は嫌か」

思っていたより教室内は静かだったらしい。
溜め息を拾った先生は怒るというよりは落ち込んでるという様な表情であたしに言った。

「あっ、いや、すみません。考え事してただけで…」

「そうか、悩み多き年頃なのはわかるがそれは休み時間にしようなー。よし、せっかくだからこの問題***に解いてもらうか!」

ちょ、切り替え早っ!;
でなきゃこの並盛の職員は勤まらないのかも知れないがそれにしたって…。
まぁいいや。授業中に考え事に耽ったあたしが悪いのだしとりあえずパパッと解いて――


「えーと、答えは…………答、え……」


――な、何だ、あれ。

指差された問題を目で追ってみるもさっぱりだった。
二度三度と見直すが数式の難解さもその長さも変わらない。

やべ、中1の数学と侮ってた。
いやしかしあんな問題習ったか?
どちらにせよ解けないことに変わりはない。

「……わ、わかりま」

多少気まずく思いながらも正直に言おうと口を開く。
だがそれを遮って、

「先生、その式間違ってますよ。後ろから二番目はマイナスじゃなくてプラスです。それじゃ誰にも解けません」

「ん…?おお、本当だな。よく言った*」

指摘によって黒板に書かれた数式が書き直されていく。
残念ながら間違っていることさえ分かっていなかったのだが、それよりもあたしは正したその人物に驚いていた。

なんとまさかの友人ちゃん。
頭良かったのか君。それより何より。

(*っていうんだ…)

実に二ヶ月、こんな形で友人の名字を知ることになるとは思わなかったがしかし未だに名前がわからないなんてあたしもとんだ薄情者である。
ここまで知る機会に恵まれないと何者かの陰謀かと思ってしまうよ。


「じゃあ*、ついでに答えも頼む」と促された友人は難なくサラリと答え、

「さすがは学年2位だな!」

そう褒められていた。

先生ナイスだ!これで次のテストの順位発表で名前を知「順位のことは言わないでください。不愉快です」

え。

………も、もしかしてもしかしなくても。
獄寺を敵視してたりしますか、友よ。

友人の何とも言えない迫力に先生は生徒達の前ということも忘れ平謝りをしていた。
いろいろな所で彼らに通じているようだが何かもうちょっと、さ…。


(良い意味であってもバチは当たらないと思うな;)

 
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