シリーズ
□どきどきする涙の5日目
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「おはよーございます、サヴァリスさん!朝ごはんできましたよー」
ぽふ、といまだに膨らんでいるベッドを軽くたたく。
と、規則正しかった息遣いが少し乱れた。
「おはよう、レベッカ」
「お、はようございます、サヴァリスさん」
寝起きのかすれ声で名前を呼ばれて背中がぞくっとする。
ああ、もうすぐ一週間たつけど、なれないなあ・・・・。
「今朝は出し巻きたまごに挑戦してみました!」
「それは楽しみ」
ぽん、と頭をなでられる。
ゆっくりと起き上がったサヴァリスさんの目は細められているうえに、寝起きのせいか頬が少し赤い。
その表情に息が詰まる。と、驚いたように目を見開かれた。
「泣いてるの・・・・?」
「はえ?」
泣いてなんか、と思うも突然サヴァリスさんの顔が目の前にあって(唇が触れそう、と思ったのはあたしの心がやましいからじゃないと思う)す、と親指があたしの涙袋をたどった。
「目、潤んでる」
「え、あっ」
「・・・・なにかあった?」
「なにもありません!ただ・・・・」
「ただ?」
「た、ただ・・・・」
しまった、と思ったときにはもう手遅れで、続きを言わないとはなさない、といわんばかりに頬に手を当てられて無理やり視線を絡められる。
そのせいでまた目に水分がたまってきた。
「・・・・もしかして、こわい?」
「っっ ち、がいます!ただ、その、恥ずかしくて・・・・」
ぞくぞく、するんです・・・・。と、こんなに近いサヴァリスさんの耳にも届くか怪しいほどの声で呟く。
が、それはきっちり届いていたようで、くくっと喉を鳴らす音が聞こえた。
「なんだ、そうだったんだ」
「あ、の・・・・」
「なら、もっと泣きなよ」
これから、ね。と頭をなでられる。
硬直しているあたしに背を向けて、朝ごはん、冷めちゃうよ、という声だけが届いた。
(こんなにどきどきしてたら、サヴァリスさんに惚れてもらうどころか普通にお話もできないよ・・・・)
(レベッカが泣いてるだけでこんなにぞくぞくするなんて)
(も、もうぞくぞくしても泣かないっ)
(もっと泣かせたいなあ)