来神臨静/
(ランダム3種)
他は宮堀と音日


たまには。と、気まぐれで帰り道を変えてみた。


雑踏の中で、俺は淡々と、退屈だなと思いながら歩いていた。


街並みの中にある公園。そこにはいつもの、大嫌いな金色がいた。俺は退屈しのぎになるだろうとこっそり近付いた。しかし向こうもなかなか鋭く、一定の距離近づくと気付いた。

「…何の用だ。悪いが手前に構ってる時間はねーんだ」
「へぇ…珍しく大人しいじゃない…つまらないなぁ」

此方を向くことなく、座り込む平和島静雄。

あぁ、退屈だ。どうせ挑発すれば軽く乗ってくるだろう。

そう思い、挑発の言葉を口にする。

「シズちゃんみたいな単細胞でも、大人しくなることはあるんだねぇ。実に気持ち悪い。バカはバカらしく…「わん!」」


何処からともなく聞こえた犬の声に遮られてしまった。すると、小さく「あ、バカ」と漏らしさっきよりも幾分か池袋最強の背中が情けなく見えた。


「…シズちゃんさぁ、今腕の中に抱え込んでるの、何」
「…何でもねぇよ」
「嘘」

ぱっとシズちゃんの顔が見える方に移動すると、不意をつかれたような表情のシズちゃんと、腕の中には泥のついた黄色い毛並みの小犬がいるのだった。


「…なにそれ」
「…」

黙秘するように、一言も話さない。


でも、本人の口から聞かなくともこれくらいの推理はできる。

「…どうせ拾ったんじゃないの」
「…ちが、」
「シズちゃん家って犬飼えるの?中途半端な情はその犬にとってもシズちゃんにとっても、なぁんの利点もないしむしろ苦しいだけだよ」
「…」


いつもなら言い返してくるのに、静かなのはきっとあまりにも図星で何も言えないからだろう。


「…俺んちなら飼えないこともないけど?」

何も考えずにそう言えば、ぱぁっとまるで犬のようにコロッと表情が明るく変わる。耳や尻尾が付いてるものならば、きっと嬉しそうに振っていることだろう。

(まぁ、飼う気なんてないけど)

と言葉にしようとすると、シズちゃんは立ち上がり嬉しそうに笑った。


「臨也は、動物には優しいんだな」



初めて見た、怒りや嫌悪以外の表情に思わず戸惑った。


「…失礼だね。ほら、来なよ」

笑顔が見れて少し嬉しかったのはきっと気のせいなんだろうと思う。


後ろについてくるその姿は犬のようだな、なんて思いながら家を目指した。


101023




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