☆山獄11お題

□プライドまでくれてやる
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虫の知らせ、とはこういうものなのか。

10代目ではないけれど、オレの直感がそう告げた。


10代目の右腕だから、いかなる時もお側を離れる訳にはいかない。
ましてや個人的な感情で動くだなんてなおさらで。

だけど、いてもたってもいられず、気付けばオレは走り出していたのだ。








10代目は日本の並盛の地下のアジトで職務を全うされていて、オレ達守護者も基本並盛を主体としている。
もちろん任務で海外に行くこともあるし、長期間並盛を離れることだってある。




今回、並盛から少し離れたところへの任務に山本をメインに何名かを向かわせた。

なんてことはない。
同盟ファミリーが不穏な動きをしてるとの連絡がはいったから、その真意を確認してこいって内容だ。


山本が並盛を離れてすでに半月は過ぎた。
報告も時々はいってくる。
特に不穏な動きは見えないと。

さすがに半月、特に問題はないだろうと判断し、電話での報告を受けながら帰還命令を下そうとした、まさにその時。

携帯電話の向こうから緊迫した喧騒が聞こえた。


「山本…っ!?」
「わりっ…さっきの報告取り消す…っっ!!」


銃声も響き、一気に緊迫したムードになったのが伝わってくる。


「山本!大丈夫か…!?」
「…隼人…ごめん…どうも見張ってたのバレてたみたいだな…どこでヘマしたんだろう…」
「そんなことより今どんな状況なんだ!?この銃声はやつらのなのか!?」


若干小声になった山本の電話の向こうでは、相変わらず銃声が鳴り響き、それに加えて匣兵器のものらしき動物の鳴き声もいくつか聞こえてくる。

そんなに人数を送ってない今回の任務、こっちも油断していた。
一気に不安がかきたてられる。


「すぐに増援送る…!耐えれるか!?」
「…隼人の手元の情報の奴らのアジトの近くに神社があるんだ…」
「今そこにいるのか!?敵の人数は!?他の奴らは…!?」
「隼人…」
「すぐに…っ行くから…!」
「…愛してるよ…」


不意に電話は切られ、ツーツーと無機質な音が届いた。

いつも任務に行く時に必ず言っていく言葉を残して。


だって、もう、次は言えないかもしれないだろ?なんて縁起でもないことを言うアイツをいつも叱咤してたけど。

アイツは、なぜ、このタイミングで言ったのか。

なぜ、今、その台詞を残していったのか。

ものすごく、不安で、不安で仕方がなかった。


自惚れかもしれないけど、呼ばれてる気がした。

アイツが。

オレに。

今すぐ会いたいと。





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