☆山獄11お題
□プライドまでくれてやる
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山本ははっきりとそこだと言い切った訳じゃないけれど、奴らのアジトの近くの神社まで車を走らせた。
必要最低限の匣とリングしか持って来なかったが、たぶんいけると思う。
気配を消して慎重に長い階段を登り、境内にあがる。
いくつかの争った形跡はあったが、すでに人の気配はなかった。
決着がついたのか。
軍配はどちらにあがったのか。
みんなはどこに行ったのか。
アイツは無事なのか――。
一度に色んな考えが頭をよぎったが、深呼吸をして気持ちを落ち着かせる。
ふとポケットの中のケータイが鈍い音とともにふるえだす。
急いで取り出し画面を覗けば、山本からの着信を示していた。
「山本っ!無事か!?今どこにいんだ!?」
「あの…っ獄寺さん!」
ケータイの向こうから聞こえてきたのは山本の声ではなく、別の男の声だった。
オレの名前を知ってることとやや焦った感じの声色から、今回の任務に同行したやつだと判断する。
「全員無事か!?」
「それが…山本さんの出血がひどくて…意識が戻らないんです…!」
不覚にも耳にあててたケータイを落としそうになった。
膝に力もはいらない。
だって、コイツは、今なんて言った?
出血がひどい?
意識が戻らない?
ダレガ?
「…何…言って…っ」
「咄嗟にオレかばってくれて…っ…あの…獄寺さん!?」
今にも崩れそうな膝を持ちこたえる。
悪い冗談でオレをからかってるだけだと信じたかった。
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