オリジナル小説兼ネタ置場

□文字馬鹿の博士
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「博士〜、お茶入れましたよ。少し休んだらどうですか」

アンスール世界のとある研究所にて、彼は今日も熱心に研究中。誰かがこうして声を掛けてあげないと朝から晩まで博士は部屋にこもりっぱなしになってしまう。たまには息抜きも必要です。

「……」

「博士!!」

「おわっ!? なんだチテトか。どうしたんだい」

「どうしたじゃないですよ。たまには休んでください。身体に悪いですよ、もう」

博士の熱心ぶりには感心するけど、休まずに研究に没頭するのは絶対良くない。あ、さっきから博士と言っていますけど彼の名前はラーグ。白衣にジーパンを着こなしている文字馬鹿の狐さんです。ありとあらゆる文字を見ては萌えて、文字の意味や成り立ちまでとことん調べる彼。
珍しい文字があればご飯3杯はいけるというアブナイ発言をするまでの末期患者です。
ちなみに私は神凪千都(かんなぎちてと)と言います。こっちの世界に来て博士の身の回りのお世話をしたり、いろいろ家事的なことをやっています。私が今こんなことをしているのには訳があるのですが、説明すると長くなるので…。

「あぁ、すまない。つい夢中になってしまって。…ありがとう、頂くよ」

そう言って私が差し出したのは油揚げを細かく刻んだ緑茶。人間には到底飲めるものではないそのお茶に博士は目を輝かせながら飲む。狐なのでやっぱりお揚げは大好きらしいです。

「よく飲めますね、それ」

「うん、美味しいよ。お揚げの染み出た油が緑茶にマッチしててなんとも言えない風味が私は大好きなんだ。チテトも飲んでみるかい?」

「いえ、いいです」

おそらく、一生その良さが分かることはない味覚。絶対に合うはずがない。

「それはそうと、研究は順調なんですか?」

「おかげさまでね。あと少しでニホンを制覇出来るよ」

「ニホンを制覇?」

私が博士の机にあるものを覗いてみるとそこには白い紙にずっしりと50音順で平仮名が書かれていた。お世辞にも綺麗な字とは言えないけど、博士は自分で書いた平仮名にとても満足している様子。
尻尾を左右に揺らしているその姿はとても…

「可愛い」

「ん、なんか言ったかい?」

「ううん、なんでもないですよ。それでニホン制覇ってどういうことですか?」

「あぁ、これでニホンの使う文字は制覇したぞっていう意味だよ。自分で書いて触れる。研究者たる者、対象物に触れてこそ立派な研究と言えるんだよ。見てただけじゃ何も分からないしね」

さすが、研究者たる発言。単に文字馬鹿で可愛いだけの狐ではない。
博士の努力は認めるけど、詰めが甘い。まだ大切な事を忘れてる。

「なるほど。けど博士、日本にはまだ使う文字がいっぱいありますよ。片仮名も使いますし、漢字も使います。平仮名だけじゃまだ制覇とは言えません」

「なっ!? そうだ、忘れていた」

しまった、と頭を抱える博士。いちいち仕草が可愛いくてたまらない。ああ、もう我慢出来ない!!

「博士ぇぇぇ!!」

「わっ?!」

思わず博士を押し倒してしまった…。またやってしまったよ。
なにぶん、可愛いものに何でも抱きつこうとするのが私の悪い癖です。博士の身近にいる以上はこの癖、直りそうもありません。

「チテト…、勘弁してくれ」

でも今ではこうして博士にも笑顔が溢れるようになりました。
慌てずにゆっくりと時間をかけてきた成果が出てきたよ。勇人君。

約束守ってるから安心して。








あれれ、なんか千都のキャラ違うような。ラーグは某シューティングゲームのあの狐を連想してくだされば充分です。勇人というのは主人公の弟です。死んでます。

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