オリジナル小説兼ネタ置場

□見せない涙
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新しい生活が始まり、まもなく1週間。西ノ宮有希は未だ同居人である犬獣人のブラウンの接待に慣れず、弟である千尋も両親がいない寂しさからか、毎日のようにぐずり出す始末。
せっかく叔母のマンションに身柄を置いてもらっているので文句など言えず、ましてや他人の部屋に居候という形で住まわせてもらっているわけでやたらと気を遣ってしまう。親戚の家に居たとき以上の精神的重圧に、彼女の精神は限界だった…。



学校からの帰宅途中、マンションには向かわずに反対方向へ足を進めていった。
有希が向かった先は近くの海岸。はじめてマンションへ向かう途中に海岸があることに気づいていた彼女は、一度来てみたいという願望を抱いていたのだった。

海岸に到着すると、そこには誰もいず波の音だけがささやかに支配しているだけだった。夕方なので、太陽は西の空へ赤く沈みかけている。
なんだか、赤く染まった空を見ると心が落ち着く。有希が小さい時はよく両親と海へやって来たものだ。そして決まってやることが、父親に肩車をしてもらって、砂浜を思う存分駆け回るという遊び。風が気持ちよくあたり、高い視線を眺められる興奮が大好きだったのだ。
両親との思い出が蘇ると同時に両親がいない寂しさが襲ってくる。

「くっ…」

泣かないと決めたのに、涙が出てきてしまう。
姉なんだから、泣いてはいけない。弟の面倒をしっかりみないと。だから泣いてる暇なんてないんだ。自分の中で決めたルールなのにまんまと破っている自分自身が情けない。


「…有希ちゃん?」

「!?」

背後で聞こえたこの声。ブラウンだった。
有希はあわてて流していた涙を拭った。

「な、なんですか。どうしてここにいるの」

「仕事終わったからね。ふと海岸を見たら君がいたから声をかけてみたんだ。…邪魔だった?」

「そんなことないです。」

「そっか。じゃあなんで泣いてた?」

「な、泣いてなんか…」

「目、真っ赤だよ」

「っ、」

なるべく迷惑はかけないから、私のことは放っておいてほしい。悪い人(犬)ではないのは分かっている。ただ、赤の他人に自宅で居候させてくれていると思うと、凄く申し訳ない気持ちでいっぱいなのだ。


「有希ちゃん、無理してるだろ?」

「別に無理なんて」

「悲しいのは分かってる。君だけ辛い思いを抱えなくたっていいじゃない。なんで無理する?」

「私がしっかりしないと弟に悪いから。私が挫けてたら弟も不安に思っちゃうから絶対ダメなんです」

「それは違う。君も弟も同じ立場だ。味わった悲しみも二人一緒だ。有希ちゃんだけ我慢することはないんだよ」

なんで他人なのにこんなに優しいのだろうか。普通は迷惑がって早く出ていってもらいたいのが部屋主の希望なのではないのだろうか。
そもそもなぜ私達を名乗り出てまで身柄を置いてくれるのか、分からない。

「有希ちゃん、本当は泣きに来たんだろ?」

「…」

図星。けど、ここで弱みをみせては相手の思うツボだろう。だから…

「違います」

ほら、また変な見栄を張る。だって他人に家庭の事情なんて干渉されたくないじゃない。

「有希ちゃん、俺は君達の状況に干渉するつもりはないよ。ただ、君の姿を見てると辛そうで見てられないんだ」


「あなたに何が分かるんですか!! 同情なんて要りません。もう私のことなんか…!?」



突然、彼が有希に抱きつく。咄嗟の行動に彼女の言葉が止まった。


「もう頑張ったよ君は。俺なんかよりずっと強い。俺もな、訳あって過去の記憶がないんだ。記憶が無いより大切な人を失った時の悲しみと失望感は大きい。君達の立場を知ったとき、俺は無意識に俺の立場と重ね合わせいたのかもしれない。…ごめんな、勝手なことして」

記憶喪失。そう告白した彼の表情はとても苦し気で今まで見たことないようなものだった。
彼にも秘密があったと知った彼女は、急に自分の見栄を張ることに対して恥ずかしくなった。溜めてきたものが一気に押し上げられ、そして決壊する。

「――っ、」

彼の胸の中で声を殺しながら泣きはじめた。嗚咽を繰り返し次第に声を出しながら、最後は力いっぱい号泣。
彼は彼女が泣いてる間、ずっと抱いていたのだった。











うん、なんか申し訳ない。よくあるパターンですけど何か←
あくまでもネタなので本編ではどうなるか分かりません。最後は疲れてもうグダグダ。
ブラウン動かしにくいな、おい…。
とりあえず抱きつかせておけばいっか。ww

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