オリジナル小説兼ネタ置場

□現実逃避の放課後
1ページ/1ページ

「うわー…」

先日実施した中間テストの答案用紙が返ってきました。
結果は言うまでもなく悲惨。100点満点の半分も稼げてない。先生も首を傾け、もっと頑張りましょうの一言。

「昼休みの気合いをテストにも注いでくれると嬉しいのですが…」

ごもっともです。チョココロネをゲットするための気合いを勉強にもっていったらどれだけ良い結果を生み出せるか。あいにく、私の性分はチョココロネに対する愛しさでしかないのです。勉強なんて面倒だもの。
それを考えるとよく高校生になれたよね、私。

「悠、あんたどうだった?」

結果なんて分かっているくせにわざと聞いてくる私の親友、千晴はひょいと首を後ろの席から出して用紙を覗きこむ。

「ひゃー、ボロボロじゃない。大丈夫なの?」

「大丈夫なわけないでしょ。解答時間から既に真っ白に燃え尽きてたよ」

「あんた少しは頑張らないと、冗談抜きで留年するわよ」

明らかに上から目線で話し掛けてくる様は私のイライラを上昇させる。
じゃあお前はどうなんだと毎回言い返すのですが、これがまた言い返せないんですね。彼女の答案用紙を見せてもらうと、クラスの中でトップ3に入るのではないかというくらい優秀な生徒なのです。

「本気で心配してるのなら、千晴の頭脳を私に頂戴よ」

「無茶言わないで」

とまぁ、いつもと同様の光景なわけです。テストの結果を見て落ち込んで、次回頑張ればいいかと自分自身を慰めて勉強に気合いを注ぐ。…が、日に日に面倒になり、一夜漬けでテストに備える。
結局、眠気には勝てずテストは散々。で、また結果を見て落ち込むと。この繰り返し何十回やったのか分かりもしない。



放課後、私と千晴は一緒に下校をする。いつもにまして私は落ち込み、電信柱に体当たりしてしまうほどひどかった。

「だいぶ重症ですなこりゃ」

「あー、何もかも忘れたーい」

「だめだよ現実逃避しちゃ。努力すれば必ず結果がついてくるから、ね。勉強教えてあげるからさ」

「あーあー、ナニモキコエナーイ」

「おい」

とにかく、今は何もかも忘れてぱーっと騒ぎたい勢いなわけです。どうしたらいいものだろうか…。


「あっ」

「どうしたの」

「向こうへ行こうっと」

「え、向こうへってどこ?」

向こうへ行けば少しは気分が晴れるかもしれない。そう考えた私は、早速「向こう」へ足を歩ませた。








「ちゃっかりしてるよな、お前」

「いやぁ、たまたまだよ」

所変わってアンスール世界。ここは殺し屋の狼獣人であるフレスの家。本日の仕事はなく、家でゆっくりとお茶を飲んで過ごしていた。
職業に似合わず彼の趣味はお茶作りなのである。オリジナルのブレンド茶葉で作るので味が左右するのは当たり前。いかに美味しく作れるか、時間が空いたときにこうして研究しているのだ。

ブレンド茶が出来たと同時に来客の姿があった。それがこの世界の警察であるツバメ警部。テレビドラマ等でよく見られる茶色のコートを着て、渦巻き眼鏡をかけている鳥獣人である。
治安を守るための巡回中とのことで立ち寄ったらしい。現実世界で言う警察官立寄所になりつつある彼の家。しかし、殺し屋の家に警部が立ち寄るとは本当に治安は大丈夫なのかと疑問を持つ方もいるだろう。ところがアンスール世界では殺し屋と警察が裏でこっそりと手を組んでいたりもしつつあるくらい親密な関係なのである。詳しく話すと長くなるので省こう…。
話の過程としてフレスの家に立ち寄った際、彼がちょうどお茶を淹れたばかりだったのでツバメもついでにお茶を頂くことになったのであった。


「ほらよ。味の保障はしねーぞ」

「いやいや、君のお茶はいつも美味しいよ。不味い訳がない」

「どうだかな。いっそのこと、毒でも入れてみるか」

「…君が言うと冗談に聞こえないよ」

「とか言いながら飲んでやがる。少しは疑えよ。あくまでも俺は殺し屋だぞ」

「うん、旨い!!」

「話聞けよ鳥」

フレスの作るお茶は何気に評判で時々知人や他の住人が茶葉を分けて欲しいとお願いにくるほどである。断る理由もないので、希望者にはお裾分けしているのだ。(満更それが嬉しかったりする)






「どうも〜、こんにちは!! 現実から逃れにやって参りました。しばらく此処に居させてください」

「なるほど、確かに現実から逃げてるよね。此処なら」

アンスール世界なら何事も考えることなんて必要ないと判断した私はフレスの家に勝手にお邪魔することにしました。家のドアを開けると奥から何やらいい香りが漂ってくるのが分かります。これはおそらく…

「紅茶系の何かだな?」

「てゆーか、勝手に上がり込んでいいの? 留守かもしれないよ? それ以前に完璧不法侵入だけど」

「大丈夫だって。『なんだ、来てたのか』ぐらいでどうせ気にしてないって」


「じゃあ、ようこそお嬢さんとでも言って欲しいか?」

突然の第三者の声にカチンと固まる私と千晴。背後のただならぬ威圧感は紛れもなく…。

「「ぎゃあーー?!」」

日本刀を持って刃先を私達に向けているフレスでした。

「ちょっと待って。日本刀はまずおかしいから。とりあえずそれ仕舞おうよ、ね」

「あぁ?」







「ふーん、要は憂さ晴らしって訳だね」

「そうそう、さすが警部分かってるじゃん」

事情を説明してなんとか日本刀で斬られずに済みました。やはり殺し屋相手に隙をつくるものじゃありません。深く反省。
だいたい、殺し屋の家に堂々と上がり込む私の行動ってどうなんだか。

「ま、それだけの勇気と行動力があるのはやっぱり弟そっくりだな」

「もっと褒めて」

「あんたね…」

どさくさに紛れて私達もお茶をよばれることになりました。静かな時間を奪われたという風な顔をしている方が一名いますが、気にせずに。

「ここは学校帰りの溜まり場じゃねーよ。それ飲んでとっとと帰れ」

「うん、そうする」

「? やけに素直じゃねーか。何を企んでる?」

「失礼な。何も企んでなんかないよ。ただほんとに騒ぎたかっただけ。さっき悲鳴上げたらスッキリしたから満足」

「え、あんなんでよかったの?」

「うん。無理やり付き合わせちゃってごめんね」

「ほんとだよ。何なの私。…でもお茶飲めたからいっか」

なんだかんだと丸く収まりはしゃぐ私と千晴。お茶を飲んで少し落ち着いたのち、帰ることにした。


「何なんだお前ら」


他人からすればはた迷惑な話ですよね。台風のように現れて去っていく。ごもっともな台詞です。でも、こうしてお茶を出してくれるだけでもありがたいです。口や性格は素直じゃない彼ですが根は優しいタイプだと思います。…言うと怒りますけど。

「人間も色々と大変なんだな。ただ自分勝手に生きてるだけじゃないのか」

「警部の言うとおりです。自分勝手だから大変なんですよ。私の場合、ただ辛いことから逃げてるだけですけど」


「逃げてたって試験はやって来るのよ」

「えぇ、千晴大先生のおっしゃるとおり。けどもう大丈夫。叫んだらちょっとやる気出てきた」

このままでは高校卒業も危うくなりかねないので、その辺は改心してもう少し真面目に取り組もうと思います。


「とか言いながら本当はお茶飲みに来ただけだろ?」

「……ばれた?」

「お前なァ」

はぁ、とため息をつくフレス。実は前にも同じようなことがあり、たまたまお茶を作っていた時にお邪魔した際、入れたてのお茶を出してくれたのを飲んだらとても美味しかったわけです。また飲めるかなと思いつつ今回も訪問してみました。ニヤリ。

「けど、ありがとう。フレスのおかげでやる気出たよ」

「何言ってんだか」

ほら、素直じゃない。ま、これが彼らしいんですけどね。






「じゃ、帰ります」

「お邪魔しました」

「本当に台風だなお前ら」

現実世界に戻ってまた頑張ろう。やればきっと私にもできるはず。

「おい、せっかく来たんだ。お前らこれ持っていけ」

フレスが帰り際にくれたもの。彼の作った茶葉でした。

「気が向いたらまた作ってやる」

「あ、ありがとう」

「なんだよ、困ったような顔して」

「いや…くれるとは思わなかったのでつい」

いやほんとに。フレスが近所のおばさん化してるよ。作ったものをお裾分けしてくれるのは嬉しいけど、キャラが違う。あ、これは作った本人に失礼ですね。これはあとで差し入れしてあげないとね。

「ありがたく思えよ」

「うん。美味しく頂きます」

「ありがとうございます」

フレスの表情ってあんなに明るかったかな…? まぁいいか。

こんな放課後も悪くはないよね。たまには現実逃避してみるもんです。さぁ、明日から頑張ろうか。







数日後。

「もう何もかも投げ出したい」

「だめだこりゃ」

そして再度振り出しに戻る。










何となく満足。書きたい描写がありすぎてうまくまとまりませんでした。スミマセン。補足として、フレスは片足を怪我しており松葉杖を片方使用しています。詳細は語らず。…あとは適当に楽しんでください。←投げやりで度々申し訳ない。

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ