南に本気

□ええかげんにせぇや
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好きになったら一直線、まっしぐら。
当たって砕けろの精神で、120%の積極性。

呆れられてもくじけない!


「みーなーみーっ!」
「…げ」


朝の登校中、見間違えるはずない大好きな後ろ姿。


「おはよ!」
「…お前なんで今日こんな朝早いん」


あたしの挨拶をスルーして不機嫌そうに睨まれた。

でも残念ながら効き目ゼロです、めげません!


「南の朝練見学」
「…来んな」
「お弁当も作ってん!」
「…はぁ」


南は嫌そうな顔を崩さず溜め息をつく。顔合わせた瞬間からあった眉間のしわが深くなった。


「お前、今すぐ帰れ」
「え、なんで!」


鞄から取り出した、4時起きして作ったお弁当に南は目もくれない。


「…そろそろ気付けや」
「な、何を?」


頭をガシガシ掻いて、イライラ度MAXな南。


「うんざりやねん、お前のその迷惑な行動」


弁当なんかいらん言うてんのに毎日作ってくるし、暇さえあれば引っ付いてくるし、練習見に来たらギャーギャーうるさいし。

南の今まであたしに抱いてた感情が、一気に溢れ出したみたいだった。


「お前うっとうしい」


押して押して押す戦法、何言われてもくじけないあたし、

のはずだったのに。


「…ごめん、なさい」


頑張ればいつか振り向いてくれるかなって、好きになってくれるかなって。

そう思ってたけど、違うみたい。


南の顔が見れなくて、来た道を走って引き返した。




「あれ、今日は南くんのとこ行かへんの?」


昼休み、いつもは南のクラス行って隣に居座るけど今日はそんな気になれへん。


「…もう行かへん」


好きな人にあんな強く拒まれたのは初めてで、さすがのあたしも自信喪失。

南の朝練見に行くんも、休み時間会いに行くんも、お弁当作るんも、放課後の練習見るんも、試合応援に行くんも、全部やめる。

南のこと好きなんも、今日で終わりにする。




次の日もその次の日も、なるべく南に会わへんように過ごした。

今日も、放課後までは。


「ほなまた明日ねー」
「ばいばーい」


友達に手を振って教室を出た。体育館には寄らん、まっすぐ家に帰る。


「…おい、」


昇降口に着いたあたりで後ろから声を掛けられた。


「み、なみ…」


振り向けば、ここ数日意識的に避けてた人。走ってきたんか、少し息が上がってる。


「ええかげんにせぇや」


いつもと変わらん不機嫌そうな顔。


「あたし、もう別に南に関わってないやん」


久しぶりに見る顔にドキドキする。あたし、まだ南のこと好きなんや。


「それが気に食わんねん」
「え?」


あたしが聞き返すと、南は息を整えて話し出す。


「今までベタベタついてきたんが急に居らんようになったら、ペース崩れる」
「なに、それ」
「俺、どんだけお前に振り回されんねん」
「………」


何?呼び止めてまた苦情?もうええやん、関係ないねんから。


「俺の生活からお前が抜けると何か物足りひん」


南の瞳に見つめられる。いっつも目合わせてくれへんかったくせに。


「それってどういう…」
「俺のそばに居れ」


その声と同時に視界は真っ暗、南の匂いに包まれた。





ええかげんにせぇや
(相手の行動に一喜一憂、)
(あたしも振り回されてる)



君のそばで、/なお様

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