南に本気

□屁理屈言うなや
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私が南烈を知ったのは、高一の夏。隣の席のバスケ部員、車谷に「インターハイ予選、応援来てや」と声を掛けられたのがはじまり。うちのバスケ部は結構強いんだけど、車谷は一年でただ一人スタメン入りしたらしい。応援に来てほしいなんて、こいつ私に惚れてるのか?とも思ったけど、後に全力で否定された。
(「アホ、んな訳あるか。隣やし声掛けただけじゃアホ」とアホって二回も言われた。)

そんなこんなで府のインターハイ予選に足を運んだのだけれど、対戦相手である豊玉高校の青いユニフォームを着た一人の男子に私の目は奪われた。

何故だかは分からないけれど、素人目で見ても綺麗と感じるスリーポイントを打つ時のフォームとか、ゴールに向かって力強く走る姿とか、すべてに強く惹き付けられたのだ。
その年、豊玉高校は府一位に輝きインターハイ出場を決めた。

私が試合中ずっと目で追ってたのは、南君というらしい。私と同じ一年。インターハイ常連の名門、豊玉高校で一年から試合出てるなんて、すごいでアイツ。と車谷が言っていた。

それから私は豊玉の試合をちょこちょこ見に行くようになり、南烈ファンとして地道に活動していた。
そして三年の秋、転機が訪れた。車谷がうちの学校から唯一、国体選手に選ばれたのだ。国体合宿から帰ってきた車谷は「お前のお気に入りの南とメアド交換してきたで!」と嬉しそうに報告してきた。(何の因果か、こいつとは三年間同じクラスだ。)

自称、愛の伝道師である車谷は(ウザいにも程がある)トントン拍子に話を進めていって、さわやかに晴れたある秋の土曜日、私は南烈と遊園地デートとやらをする事になった。車谷はご丁寧にも割引券をくれた。(用意周到すぎてウザい)

ファンと言っても、恋愛感情とはまた別モノで。一方的に見ているだけで話した事もないし、知ってるのはプレー中の姿だけ。喋ったら変な人だったらどうしよう、とか。試合中にヤジを飛ばしまくる豊玉応援団みたいに怖い人だったらどうしよう、とか。
期待と緊張に胸を膨らませて待ち合わせ場所に向かった。



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