キリリク・記念

□二万打記念小説
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「あぁんの我が儘王子がぁああ!!!」

「「ひぃい゙ー!!」」

兵士たちからの報告でついに怒りの臨界点を突破した王子のお目付け役兼補佐こと、ニコル・アマルフィは仁王立ちで身体を震わせた。

「ニ、ニコル様…」

いつもは柔らかな面差しの少年が今は鬼の表情で怒りに震える姿は何度見ても恐ろしい。

一緒に失踪した王子を捜していた年若い兵士たちは、目の前の光景に彼とは別の意味で震えていた。

「今すぐ捜索隊を出しなさい!見つけ次第、捕らえるのです。手段は多少荒っぽくても構いません直ぐに連れ戻して来なさい!!」

「た、直ちにっ!」

脱兎の如く走り去る二人の兵士の後ろ姿を見送って、ニコルは小さく溜め息をついた。

「カガリ様には…正直に告げるしかありませんね」

いくら婚約者の少女が気さくで朗らかでも、かれこれ三十分以上も待たされた末、この事実を告げるのは流石の自分でも気が引けるというものだ。

「なんだ、アスランの奴、脱走でもしたのか?」

「そうなんですよ、あの王子は━━━って?!! カッ、カガリ様!?どうしてこちらに!」

後ろを振り返れば、金の髪が美しい、気さくで朗らかな婚約者こと、カガリ・ユラ・アスハ王女が立っていた。

「あぁ、城の中が騒がしいから気になってな、部屋抜け出して来た」

「ぬ、抜け出して来た、って……カガリ様ι」

あっけらかんと何でもない事のように言うお姫様に、ニコルは脱力しかけたが、彼女の次の言葉でまた現状を思い出す。

「……で、逃げたのか?あいつ」


「も…申し訳ありませんカガリ姫!!姫がいらっしゃると分かっていながら、このような事態になり━━」

「あ〜、別に私は構わないぞ。あいつのこと別に好きじゃないしなぁ」


「……」

如何にも面倒臭そうに言うカガリだが、仮にも婚約者がそんな事を相手側に、にべも無く言っていいのだろうか。

「ん?あぁ、大丈夫だ。お父様には適当に言っておくから心配するな」

ニコルの沈黙を違う意味に捉えたのか、カガリ姫は人好きのする笑みを浮かべて言った。

同時に「なっ!」と姫とは思えない力で肩をバジバシ叩かれ、不覚にもニコルはよろめいてしまう。



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